機動戦士ガンダムSEED DOUBLE FACE FINAL−THE LAST TRAGEDY−(前)

 C.E.73。
 後にブレイク・ザ・ワールドと呼ばれるユニウス7落下事件により地球は壊滅的な被害を受けた。
 その後地球連合軍はプラントに対し、大規模な核攻撃を決行。
 プラントに迫る核攻撃隊。
 守備に出ていたイザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマンの両名の所属する隊もその戦場に出ていた。
「くっそおおおおおおお!」
「この、落ちろよ!」
 スラッシュザクファントムの大型ビームトマホークが唸り、ガナーザクウォーリアのオルトロスが閃光を放つ。
 しかし核攻撃隊により核ミサイルが放たれた。
「しまった! ディアッカ、核ミサイルを止めろ!」
「分かっている! だが、こいつらが邪魔で・・・・・・・・・」
 プラントに迫る核ミサイル。
 イザークとディアッカは恐怖を感じた。
 目の前のダガーLを倒すだけで精一杯。
 これまでか。
 そう思ったとき、次々とダガーL、ウィンダムが撃破されていく。
 レーダーに反応があった。
 それはザフトでも連合でもない「UNKNOWN」だった。
 モニターに映ったその機体は。
「なっ・・・・・・・・スト・・・・・・・ライクっ!?」
 その後、ニュートロン・スタンピーダーにより核攻撃隊は全滅。
 プラントは護られた。
 ザフトの大型空母ゴンドワナに帰還したイザーク。
 彼の頭にはあのストライクの事しかなかった。
「おい、イザーク。あの機体・・・・・・・」
「ああ、所々違ったが・・・・・・・あれはストライクだった!」
 その瞳には憎しみの炎が上がっていた。
 大戦時、イザークはストライクから屈辱の傷を受けた。
 しかしその時の借りを返す事のないままストライクはアスランの駆るイ−ジスとの戦闘により大破。
 復讐を果たす事は無かった。
「まあお前がそこまで興奮するのも分かるけどな・・・・・・・・。だがさ、もういいだろ、その事は」
「・・・・・・・・ふん!」
 イザークは先に一人で行ってしまった。
「ディアッカ!」
「おお、シホ。いい加減呼び捨ては止めてくれないか? 俺のほうがお前よりの上なんだからさ」
「何言ってるの? 私の方が上なのよ?」
 そう。
 今のディアッカは緑服。
 大戦後、赤服から降格してしまったのだ。
 イザークは指揮官のみが着る事を許された白服だと言うのに。
 ちなみに後輩のシホ・ハーネンフースは赤服。
 何だか変な構図である。
 更に言うとシホはイザークに対して少なからず好意を抱いていた。
「隊長は?」
「ああ、向こうに行った。ただ・・・・・・今は声かけないほうが良いぜ?」
「どうして?」
「今のアイツは・・・・・・・・・最悪のコンディションだからな」
 
「アスラーン!」
 そう言ってアスラン・ザラに抱きついた少女がいた。
「君は・・・・・・・ミーア!?」
「ラクスよ、ラークース。ねね、向こうでお食事にしましょ?」
「いや、俺は・・・・・・・ああ!?」
 連行されるアスラン。
 彼はこのたびの事件の事でデュランダル議長に会見を申し込んでいた。
 議長の口からはミーア・キャンベルの存在の事を知らされた。
 そのミーアはこの様子。
 だが、そんなアスランの頭には他の事でいっぱいだった。
 それはセイバーと言う機体。
 救世主の名を冠するこの機体。
 今のアスランにどうしろ言うのか。
『笑ってくれて構わんよ』
 デュランダルの声が響く。
『彼女の力は強大なのだ。今の私なんかよりも、遥かにね』
(俺は・・・・・・・)
 そう考えている間もミーアは料理のメニューを見てはしゃいでいた。
 彼女はラクスのファンで声が似ているため議長から呼ばれ、この役を買っているのだという。
「アスラン?」
「君は・・・・・・このままで良いのか?」
 アスランの問いにミーアはきょとんとした。
 答えは一つ。
「ええ、私のことを必要にしてくれる人がいる。それだけで私は嬉しいわ」
「そうか・・・・・・」
 自分のことを必要にしてくれる人がいる。
 今のアスランを必要にしてくれる人がいるだろうか。
 彼はプラントの夜空を見上げた。
 
 次の日。
 彼は議長に言われ、ホテルに泊まっていた。
 その部屋を誰かがノックした。
 アスランがドアを開けるが早いが、シルバーの髪を男が掴みかかった。
「アスラン、貴様ァっ!!」
「イザーク!? おい、ちょっと待て! ディアッカ、見てないで止めてくれ!」
「嫌だね。そう見えてイザーク、本当は嬉しいんだぜ?」
 彼なりの再会の喜びを表しているのだろう。
 しかしアスランは二人に聞いた。
 どうして来たのかと。
 二人は上層部の命令でオーブの「アレックス・ディノ」の護衛の任を任されていた。
 それは間違いなくデュランダルの仕向けた事。
 すぐに頭に浮かんだ。
「どこか行きたい所とかあるのか?」
 ディアッカが訊ねた。
 アスランは短く「ああ」と答えた。
 向った先は墓地。
 そこで花を手向ける。
 手向けた墓には「ミゲル・アイマン」、「ラスティ・マッケンジー」、「ニコル・アマルフィ」と書かれていた。
 そんな彼らのほかにも二人、男と女がいた。
 男は特長的なオレンジの髪形をしている。
 女の方は薄い紫色の長髪。
「お前達・・・イザーク・ジュールにディアッカ・エルスマン。それにアスラン・ザラじゃないか!」
「・・・・・・・・誰だ?」
「ハイネ・ヴェステンフルスだ。よろしく! こっちはエリス・アリオーシュ」
「どうも」
 二人はミゲルの墓に花を手向けていた。
 そこにはおおよそ場違いなひまわりの花が。
 そういえば。
 アスランは思い出した。
 ミゲルはひまわりの花が好きだったな、と。
「そう言えば先のプラント防衛戦にも、ハイネは出ていたのよね?」
「ああ。戦艦を2隻も落としたんだぜ! 凄いだろ!」
 自慢げに語るハイネ。
「ふん! そんなの自慢にもならんわ!」
「お、言うねぇ」
 どちらも負けず嫌いと言うところで張り合っているのだ。
「ハイネ、そろそろ行かなきゃ」
「そうだな。じゃあな、3人とも」
 ハイネ達が去った。
 残されたアスラン達は、墓に向って敬礼をしていた。
 そして突然イザークが口を開いた。
「戻って来い、アスラン」
 あまりにも突然すぎる。
 戻って来いとは。
「お前には力がある。その力をただ弄んでいるだけで良いのか?」
「俺は・・・・・・」
「ま、最後に決めるのはおまえ自身だけどな」
 ディアッカが言う。
 確かにアスランには力がある。
 大戦時にはSEEDを持つものとしてキラ、カガリ、ラクス達とともに戦争を止める事に成功していた。
 だが彼はあのパトリック・ザラの血を受け継ぐもの。
 むやみに戦火を広げてしまったため、また戦場に戻るのに負い目を感じていた。
 最後は自分で決める事。
 力があるのなら・・・・・・・・・・自分は。
 アスランは決意した。
「そういえば、この間のプラント防衛線の時・・・・・・・」
「うん? どうした、ディアッカ?」
「いや、ストライクを見たんだ、俺達」
 ストライクを見た。
 アスランにとってそれ以上衝撃的なことは無い。
 ストライクは自分が撃ち、その後ムウ・ラ・フラガの乗機として復活したものの、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦の折、アークエンジェル級二番艦ドミニオンのローエングリンよりアークエンジェルを護るために大破。
 その際にフラガも戦死している。
 よって今、ストライクがいることはないのだが。
 その事がアスランの頭には引っかかっていた。

 L2ポイントにある宙域。
 ここには廃棄されたネオ・ジェレイドのコロニー、ディザイアが漂っている。
 ネオ・ジェレイドの反乱によりディザイアは放棄、今は無人コロニーとしているのだが。
 その無人コロニーに数隻の戦艦が入港していた。
 その艦の1隻から、彼は降り立った。
 クルセイド・アヴァストラール。
 18歳の少年だが、ネオ・ジェレイドの理念に賛成の意を持ち、入隊した。
 ネオ・ジェレイドの反乱後、彼は残党軍の一人として存在していた。
 今や世界は再び戦禍に包まれた。
 またあんな見苦しい戦いを始めたのだ、世界は。
 彼はそれが許せなかった。
 クルセイドはブリーフィングルームに着いた。
「勇敢なる、ネオ・ジェレイドの諸君! 先の戦闘により総帥ロイド・エスコールは死に、またハイウェル・ノースも死んだ! どちらも平和を心から望んでいた! しかし彼らは志半ばに倒れていった! われ等がその想いを継ごうではないか!」
 彼らは50人弱の少数の組織となっていた。
 しかい、未だにその影響力は大きい。
 この戦禍を止めるためには、一度世界をリセットする必要がある。
 そのために、彼らはまず地球に対して攻撃を仕掛けることに。
 クルセイドはそのために新型機を受領していた。
 NJ−MSX105ストライクMk−U。
(俺は・・・・・・戦争など嫌いだ。それを止めるためならば、どんな事でもする!)
 そして彼はストライクMk−Uに乗った。
 ストライク Mk−Uは核エンジン搭載のMS。
 連合の作ったストライクにザフトの技術を盛り込んだ、ネオ・ジェレイドならではのMS。
 もちろん基本性能這うストライクとは比べ物にならない。
 作戦はこうだ。
 まずは自分達の存在を示さなければならない。
 すぐに全世界の電波をのっとり、彼らはその存在を表した。
 作戦決行日は4日後。
 4日後に全てが決まる。
 そう、全てが。

 ネオ・ジェレイド残党による放送で、地球上は混乱しきっていた。
 4日後、地球にコロニーを落とし世界をリセットするのだと言う。
 世界は恐怖した。
 もちろん、この事は彼らにも届いていた。
「姉さん、あの放送・・・・・・・」
 フエンは拳を握った。
 サユは痛々しげに瞳を閉じた。
 またこの世界が混乱に陥るのなら・・・・・・・・自分は。
 フエンは立ち上がった。
 もう彼は軍人ではない。
 どうする事も出来ないのかもしれない。
 それでも、彼はいてもたってもいられなくなった。
「姉さん、バイク貸してっ!」
「ちょっと、フエン!?」
 フエンは飛び出した。
 向った先は連合の基地。
 彼は除隊の際にカードキーを預かっていた。
 それはファイナリィ小隊のほかのクルーにも渡されていた。
 しかし、結果的に郡を抜けたのはフエン一人。
 デュライド、アスト、ラグナはMSの仕官に。
 エメリアはオペレーターに。
 リエンとミリアは相変わらずの様子。
 フエンはカードキーを見せて基地内に入った。
 そして基地長に駆け寄った。
「おねがいします! あの機体を僕に!」
「だが今の君は軍の人間ではない! 今までは目を瞑っていたが、こればかりはどうにも・・・・・・・・」
「良いじゃないか、渡しても」
 部屋に響く軽い声。
 この声の持ち主は・・・・。
「リエン大佐!」
「違う! 今は三尉だ」
 リエンはフエンに言う。
「お前に再びイルミナを託す。この状態を、打破してくれ! もちろん俺も行く!」
「リエン・・・・・・・大佐」
「三尉だ」
 彼らはすぐに艦への積み込み作業に取り掛かった。
 その間に入る皆の他にエールストライカーを装備したウィンダムが2機、ソードとランチャーを装備したウィンダムが1機ずつ搭載されていた。
「これは・・・・・・?」
「俺らの機体だ」
 そこにいたのはデュライド、アスト、ラグナ、エメリアの四人。
 彼らもフエンとともに行くのだと言う。
 積み込み作業は3時間で終了し、マスドライバーによって宇宙へと上がった。
 再びフエン達は戦場に出た。

 4日後の作戦決行の前に、ネオ・ジェレイド残党軍はその力を更に見せ付けるために連合軍シドニー基地へ向い隕石落としを決行。
 その隕石はあのボアズと同じくらいの大きさ。
 そんなものが地球へ落ちようとしているのだ。
「クルセイド・アヴァストラール、ストライクMk−U、行きます!」
 ストライクMk−Uが隕石護衛のために出撃した。
 地球へ近づくと月面からMSが発進してきた。
 ダガーLやウィンダムなどその数は多い。
 クルセイドはスコープを出し、狙いを定めた。
 今のストライクMk−Uはランチャー装備。
 カーソルを合わせ、トリガーを引いた。
 強烈な光がダガー隊を貫いていく。
「・・・・・・消えろ、虫ケラども!!」
 クルセイドは笑みを浮かべた。
 そんな彼の機体に接近するものが。
 ウィンダム隊だ。
 再びアグニのトリガーを引くクルセイド。
 だが統制が取れているためか、ウィンダム隊の動きは素晴らしく良い。
 アグニで再び攻撃するものの、攻撃が直線的過ぎてまるで当たらない。
「ソードを射出してくれ」
 そう言うとクルセイドの乗る艦からソードストライカーが射出された。
 シュベルとげベールを抜き放つ。
「こ・・・・こいつ、パックの換装を!?」
「気をつけろ! やつは・・・・・・・・・・」
 最後まで言う事はなかった。
 ストライクMK−Uの剣の前にウィンダムなど紙切れ同然。
 クルセイドはウィンダム隊をある程度あしらい、艦の殲滅に取り掛かった。
 クルセイドの活躍により無事、隕石は地球へと向った。
 落ちていく隕石にクルセイドはただ笑みを浮かべていた。
 彼は今自分の任務を全うできた事に喜びを感じていた。
 艦に戻ったクルセイド。
 彼はすぐに自室に入った。
 そして写真を見た。
 写真にはクルセイドとその家族が写っていた。
 大戦時、彼は家族を失った。
 理不尽な攻撃により家族を失い、彼は深い憎しみの念のとらわれた。
 そしてザフトにも連合にも所属せずに、この世界を変えるためにネオ・ジェレイドに入隊した。
 そのまま彼らのもk的を果たすことなく、ネオ・ジェレイドは解散した。
「俺は・・・・・・この世界そのものを許さない! 例え俺のとった道が間違っていても・・・・・・俺は後悔などしない! 俺の前に何が立ちはだかろうとも、敵は・・・・・・・」
 写真を握る手に力が入る。
 クルセイドの目に憎しみの光が宿る。
「潰す!!」
 
 月面ノースブレイド基地にたどり着いたフエン達。
 そこでシドニーに落ちた隕石の事を聞いた。
 それを防衛するためにノースブレイド基地からの何体かMSを出したのだが。
「このMSにやられてな・・・・・・・」
 そういって出したのは工学映像が捉えた写真。
 そこに映っていたのはダガー隊やウィンダム隊を異常に落としていたMS。
 それはあのストライクに酷似していた。
 が、細部が違う。
 腰にはフリーダムのものと似たレールガン。
 頭部にはブレードアンテナの他に2本のアンテナ。
「まるでストライクMk−Uだな・・・・・・・」
「ストライクMk−U・・・・・・・」
 以後、このMSはストライクMk−Uと呼ばれる事になった。
 それにしても・・・・・・・。
 リエンは考えた。
 大戦後、すぐにザフト残党軍による隕石落としが行われた事があった。
 あれと今回は非常に似ている。
 だが今回はコロニー落とし。
 それこそ酷い被害になる。
 そこで、もしもの時のためにリエンはある装置の開発に取り掛かるように指示をした。
 それは俗に言うコロニーレーザー。
 これは推測だがコロニーほどの巨大な物質を誘導するには、誘導艦が必要となる。
 それらを全て落とせばコロニーは止まるだろう。
 だが、もしも止まらなかった時はコロニーレーザーを持ってコロニーを破壊するという事に。
「この作戦がもし失敗したら・・・・・・・・世界は終わりだ。良いな、何としてもコロニーを地球へ落とすな!」
「了解!」
 会議が終わり、解散した。
「フエン」
「デュライドさん! お久しぶりです」
「ああ、元気そうだな」
 デュライドがフエンの頭に手を置く。
 そして気付いた。
「・・・・・・・・お前、背が伸びたか?」
「あ、はい。3センチほど」
「凄いなぁ・・・・・・」
 フエンが微笑む。
 二人が会話をしていると、リエンが通りかかる。
「あ、リエンたい・・・・・・・三尉」
「よう、ここにいたのか」
「ええ、まあ。ミリア中佐とはどうですか?」
「まあ、普通かな・・・・・・?」
 照れ笑いをする。
 数ヶ月しか離れていないはずなのに、フエンは凄く懐かしい感じがしていた。
 こんな時間が何時までも続けば良いが。
 そうも行かなかった。
 つきにネオ・ジェレイド残党軍が迫っているという放送が流れた。
 コロニー落としをする際に、月面の戦力は厄介なもの。
 やつらは今のうちに叩こうと考えたのだろう。
 フエンは走った。

 クルセイドは来たるべく出撃に備え、ストライクMK−Uのコクピットの中にいた。
 先にレイスが出撃した。
 戦闘が始まった。
 この戦闘で月面の戦力を削る事ができなければ後々面倒な事になる。
「クルセイド、準備は良いか?」
「ああ、いつでも出れる!」
 ストライクMk−Uがカタパルトハッチに乗る。
 ヘルメットのバイザーを下ろし、クルセイドは目の前のハッチが開くのを待った。
 同じ頃、フエンもイルミナのコクピットの中にいた。
「良いか、敵の数はかなり多い! 油断するなよ!」
「はい!」
 フエンがヘルメットのバイザーを下ろす。
「フエン・ミシマ、イルミナ・・・・・・・・」
「クルセイド・アヴァストラール、ストライクMK−U・・・・・・」 

『行きます!!』
 
 月軌道での戦闘はネオ・ジェレイド残党軍がしばし有利だった。
 レイスがいくら旧式とは言え、連合とザフトの技術が合わさっているのだ。
 そう簡単には老兵にはならない。
 エールウィンダムの中でエメリアとデュライドは敵に狙いを定めた。
 同時にビームライフルを放ち、レイスを撃破していく。
「くそ・・・・・・・この!」
 ラグナはソードウィンダムで出撃、シュベルトゲベールで敵を切り裂く。
「アスト、援護を!」
「了解! 行きます!」
 ランチャーウィンダムのアグニが火を噴く。
 それを避けようとレイスが動くが、ソードウィンダムが先に回りこみ、切り裂く。
「相変わらず近接戦闘は凄いね、ラグナ」
「当たり前だろ!」
 そこへ、ストライクMK−Uが現れる。
 ラグナとアストは息を合わせ、ストライクMK−Uに攻撃を仕掛けた。
 そのコクピットでクルセイドはひどく落ち着いていた。
 二機のウィンダムが相手でもストライクMk−Uは引けを取らない。
 むしろ余裕だ。
 腰のクスィフィアス・レール砲Mk−U「バルムング」を放つ。
 高速で放たれた実態弾がウィンダムのシールドを破壊する。
 次に脚部。
 次に右腕。
 最後に頭部。
「ふん・・・・・・・・・」
 クルセイドは次なる獲物を探すために走った。
 次なる獲物は1機のエールウィンダムだった。
 それはデュライドの機体。
「ほう、俺の相手をする気か・・・・・・・・! 来い!」
「少しは出来るようだが・・・・・・・俺の前には!」
 二機のMSのビームサーベルが交わり、周囲に火花を散らした。
 性能で言えばウィンダムは負けているが、そこはデュライド。
 テクニックでカバーしている。
 左腕に装備していたシールをパージし、更にエールストライカーのビームサーベルを抜いた。
「喰らえ!」
 しかしストライクMk−Uはひらりとかわし、逆にデュライドのウィンダムの両足を薙いだ。
 機体が揺れ、デュライドのウィンダムは行動不能に陥った。
 ついにストライクMk−Uはイルミナと対峙した。
「どうしてお前達は・・・・・・・こんな事!」
「イルミナ・・・・・貴様のせいで、ロイドさんもハイウェルさんも死んだ! その罪を・・・・死を持って償え!!」
 イルミナとストライクMk−Uが互いにビームライフルを放つ。
 それは命中こそしなかったが、意思を交わすためには最適だった。
 絶対に相手を許さない。
 その表れだ。
 まずはイルミナが走る。
 両手にビームサーベルを持ち、次々と切り込んでいく。
 だがストライクMk−Uも負けじとビームサーベルで切りかかる。
 両者一歩も引かず、一進一退の攻防が続く。
 が、時間とともにどちらが不利かはっきりしていった。
 ストライクMk−Uは核により無限の力を得ている。
 対してイルミナは通常の2.5倍のエネルギー容量。
 時間が経つとともにイルミナは不利になる。
 クルセイドは更に追い討ちをかける。
 ここで、ここでこいつらを倒さなければ、全ては意味を無くす。
「だから・・・・・・・・俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 クルセイドの中で何かが弾ける。
 刹那、目の前がクリアになり全ての感覚が研ぎ澄まされた。
 ストライクMk−Uが自分の手足のように動く。
「はああああああああっ!!」
 ストライクMk−Uがエールストライカーのビームサーベルを二本とも投げた。
 思いも寄らない攻撃に、イルミナの回避運動が遅れた。
 両腕が千切られ、ストライクMk−Uのラケルタ・ビームサーベルがイルミナの頭部を貫いた。
 イルミナまでもが行動不能に陥った。
 月面の戦力はほぼ壊滅。
 この瞬間クルセイド達の目的は達成された。
 撤退するネオ・ジェレイド残党軍。
 フエン達は完膚なきまでにやられた。
 世界崩壊への歯車は、少しづつ音を立てずに動き始めた。


(後編へ続く)


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