機動戦士ガンダムSEED DOUBLE FACE FINAL−THE LAST TRAGEDY−(後)

 ネオ・ジェレイド残党軍の前にフエン達は大敗した。
 イルミナは大破し、戦力も大きく削がれた。
 イルミナを直すのに最低でも3日、急ピッチで2日半かかる。
 それまでに残党軍が動かない保証は無い。
 フエン達は次の手を考えていた。
 とは言えコロニーレーザーの完成を待つしかないのだが・・・・。
 フエンは考えていた。
 ストライクMk−Uのパイロット、恐ろしく腕の立つものだった。
 ストライクMk−U。
 後の調査で分かったが、あのMSは核搭載機。
 残党軍の技術力が伺える。
 更にストライカーパックの交換により戦闘力も上がる。
 勝てるにはどうすれば・・・・・。
 そんなノースブレイド基地にある輸送船が近づいていた。
 それはザフトのもの。
 すぐに第二戦闘配備が発動された。
「接近中のザフト軍の輸送船! 応答せよ! 貴官らは月面基地に接近中である。速やかに転進せよ!」
『まあ待てよ。俺たちは戦おうって訳じゃない』
 聞こえてきたのは男の声。
 モニターに映ったのは日焼けした肌の男。
『俺はザフト軍のディアッカ・エルスマンだ。悪いが、この船を着陸させてもらえないか?』
「どういうことだ?」
『降りてから話すさ』
 輸送船が基地内に入った。
 ディアッカは降りるとリエンと出あった。
「久しぶりだな、エルスマン」
「まぁ・・・・ね。それにしても・・・・・・厄介な事になっているようで」
 リエンは失笑した。
 と、雑談はこれほどにしてディアッカは輸送船から1機のMSを降ろした。
 そのMSいリエンは見覚えがあった。
 ZGMF−X21A、セフィウス。
 過去2度、リエン達の前に立ちはだかった機体。
 一寸の狂いも無く、セフィウスはリエン達の前に現れた。
「どうしてこれがここに!?」
「落ち着けよ。これは議長からの「贈り物」だ」
 ディランダル議長がセフィウスをリエン達に預けたのか。
 何故、一体。
 疑問ばかりが頭に浮かんでくる。
 敵である連合にMSを提供するほど、議長は余裕なのか。
 それにしてもこのセフィウスをどうすれば良いのか。
 与えられた所で乗るパイロットを決めないと。
「それならば議長からご使命があってな。フエン・ミシマと言うパイロットにこれを託す、だそーだ」
「俺が・・・・・?!」
 ますます分からない。
 議長はどうしてフエンにセフィウスを託したのか。
 そもそもなぜ議長がフエンのことを知っているのか。
 どんな情報網で知ったのだろう。
 ますます疑問ばかりが出てくる。
 しかしフエンはM.O.Sで狂されている故に、その搭載機で無いと上手く扱えない。
 が。
「俺・・・乗ります」
「な・・・・・・正気か、お前!」
「はい」
「これがどういう機体か知ってるのか!?」
「知ってます」
 どこまでも真っ直ぐなフエンの瞳。
 それ以上行ってもフエンの意思は変わらないと知ったリエンは何も言わなくなった。
「なあ、イルミナのM.O.Sは無事なのか?」
「え・・・・・・・まあ使用できますが」
「なら、それをセフィウスに移植する事はできないのか?」
「そうか・・・・セフィウスをM.O.S対応機にすれば・・・・・・」
「フエン君でも乗れるって訳ね」
 急いでM.O.Sの移植作業に取り掛かることに。
 ついでにイルミナの修復も同時進行で行われた。
 ちなみに修復後のイルミナはデュライドが乗ることになった。
 これで、残党軍への対抗策は出来た。
 
 クルセイドはストライクMk−Uの整備をしていた。
 もう3日もすればコロニー落としにより世界は散華する。
 そうすれば今度こそ理想郷ができる。
 だがその後はどうするのだろうか。
 理想の世界を作って、その後は。
 最近、ふとそんなことを考えるようになった。
 終いにはこれが正しいのかどうか、悩むようにもなった。
「悩んだら・・・・・・お終い・・・・・か」
 キーボードをしまうと、コクピットを出た。
 迷う事などないはずだ。
 自分がしてきた事は間違ってなんかいない。
 正しい。
 そうさ、いつだって。
「総員、ブリーフィングルームへ集合せよ。繰り返す、総員ブリーフィングルームへ集合せよ」 
 ブリーフィングルームにつき、説明を聞いた。
「良いか、地球へ落とすためのコロニー「フィーズ」が先ほど届いた。このコロニーを今から地球圏へ向けて輸送する。最低でも2日はかかる。その間にコロニーを輸送する任務を皆に与える。良いな、抜かるんじゃないぞ!」
 輸送開始は一時間後。
 それまでに各員MSにて待機、と言う命令が下った。
 いよいよだ。
 この作戦が決まれば、世界は自分達のものになる。
 クルセイドは震えていた。
 果たしてそれは武者震いなのか、はたまた違うのか。
 息を整えるクルセイド。
 そしてついに輸送時間が来た。
「クルセイド・アヴァストラール、ストライクMk−U、行きます!」
 外には既に護衛用のMS、戦艦が出ていた。
 エネルギーが尽きても戦艦に戻って補給が出来、敵が来てもこれほどの戦力ならやられる事は無い。
 地球圏につくまでの2日、気を抜くわけにはいかない。
 クルセイドはこの間の戦闘で対決したあの白いMSの事を思い出した。
 あのMS、負けこそしたものの強さでは引けを取ってはいなかった。
 が、こちらが負ける事はもう無い。
 背負っているものが違うから。
 そしてコロニー輸送は何事もなく進み、2日が過ぎた。
「見えたぞ」
 隊長の声で皆が正面を見た。
 青く輝く惑星がそこにはあった。
 予定よりも少し早めに付いたが、何の支障も無い。
「これより、地球へのコロニー落としを決行する! 良いか、抜かるなよ!」
 残党軍が行動を開始した。
 その様子を月面ノースブレイド基地では捉えていた。
 残党軍行動開始の知らせはすぐに知らされ、MS隊が出撃した。
「参ったな・・・まだコロニーレーザーが完成していないのに・・・・」
「なら、アレを使うか?」
「アレ・・・・とは?」
 リエンは別基地に案内された。
 地球軍ダイダロス基地。
 そこには大きなクレーターが出来ていた。
「これは?」
「レクイエム。本来なら完成はまだ先だがな・・・・。これは数機のコロニーにゲシュマイディッヒ・パンツァーを展開、ビームを湾曲させる事によりどこでも狙撃できる兵器だ。本来なら使いたくはないが・・・・・・緊急事態だからな。リエン、お前がトリガーを引け」
「分かった」
 月面宙域での戦闘が始まった。
 フエン達も急いで出撃した。
「アスト・エル、ウィンダム、行きます!」
「エメリア・コーテリス、ウィンダム、出ます!」
「ラグナ・イシュバール、ウィンダム、出るぞ!」
「デュライド・アザーヴェルグ、イルミナ、出る!」
 四機に続き、フエンが出撃した。
「フエン・ミシマ、セフィウス、行きます!!」
 灰色の機体が宇宙に出た。
 セフィウスのルプス・ビームライフルが火を噴く。
 更にファトゥムー01を飛ばし、相手をけん制。
 ラケルタ・ビームサーベルで相手を切り裂く。
「まずはコロニーを誘導している誘導船を潰すんだ! そうすれば今ならまだコロニーは止まるはずだ!」
 デュライドが叫ぶ。
 チャンスは一度。
 これを逃せばコロニーは地球へと落ちていくだろう。
 コロニーレーザーも完成していないのだ。
 ここで何としても止めなければ。
 セフィウスとエメリアのエールウィンダムが走る。
 二機は別れ、誘導船を発見した。
 数は7。
「この! これ以上させるか!」
 セフィウスの全砲門が誘導船を捕らえた。
 誘導船が爆発したが、まだ残っている。
「邪魔をするな、貴様ら! この世界を修正するために、これはやり遂げなければならないんだ! それがどうして分からない!」
「分からないよ! 今のままの世界で良いじゃない! わざわざ修正する必要なんて・・・・・!」
 セフィウスが走る。
 その手にはラケルタ・ビームサーベルが握られている。
「無い!」
 が、ストライクMk−Uは紙一重の所でかわすと、クスィフィアス・レール砲Mk−U「バルムング」を放つ。
 セフィウスがシールドで防ごうとするが、逆にシールドが破壊された。
 防御する手立てを一つ失ってしまった。
 だがまだPS装甲がある。
 セフィウスはストライクMk−Uと同じくNJC搭載機。
 核で動いているため装甲がとかれる事は無い。
 それに相手がいくら強いとは言え、セフィウスはザフトでも最強のMSの呼び声が高い。
 そしてセフィウスには今、M.O.Sが搭載されている。
 フエンの意思によって、MSの性能を底上げできる装置。
「今ここで・・・・・・・コロニーを破壊しなければ、地球は終わりなんだ! 君たちの身勝手な理屈なんか・・・・・!」
 セフィウスの全砲門がストライクMk−Uを襲う。
 クルセイドは心なしかセフィウスの武器の威力・スピードが上がったように感じた。
 それは間違っていない。
「負けられないのは・・・・・俺も一緒だ!!」
 クルセイドの中で何かが弾けた。
 SEEDだ。
 彼もまたある理由からメンデルに関わった者一人。
 戦争を無くすためにこのコロニー落としを行うのが、残党軍の目的。
 だがクルセイドには別の目的があった。
 メンデルなどと言う隔離された棺桶の中で、実験台として名前で呼ばれず番号で区別。
 そして実験は失敗。
 連合に憎しみを抱いたクルセイドはザフトに入ろうとしたものの、連合の元で実験されたクルセイドを受け入れるはずが無く、彼は世界をさまよった。
 連合が憎い。
 ザフトが憎い。
 世界が憎い。
 彼は、ネオ・ジェレイドに入った。
 憎い、憎い、憎い。
 全てが、何もかもが。
「うああああああああああっ!!!」
 クルセイドは絶叫した。
 フエンはその威圧に動けなかった。
 それはほんの1、2秒の事だが、戦場ではそれが死へとつながる。
 ストライクMk−Uのサーベルはセフィウスのコクピットを狙っていた。
 そう、狙っていた。
 ストライクMk−Uのサーベルが捉えたのはセフィウスの背中のリフター。
 サーベルが外れた。
 いや、サーベルが外れたのではない。
 セフィウスが外したのだ。
 サーベルが命中する刹那、フエンの中でもまたSEEDが弾けた。
 世間一般的にSEEDは可能性を持つものに宿るといわれている。
 もしかしたらフエンも、様々な可能性を秘めているのだ。
 キラやアスラン、ラクスにカガリと同様に。
 リフターを失い、身軽になったセフィウスはその尋常ならざる速さでストライクMk−Uを翻弄する。
「落ちろ!」
 セフィウスの残された武装が一斉に火を噴いた。
 ストライクMk−Uの四肢をもぎ取る。
 失敗だ。
 もうこうなっては作戦は失敗した。
 クルセイドは大人しく死を受け入れようとした。
 がセフィウスは攻撃する気配は無い。
「何をしているんだ・・・・・・・・? 早く殺せ・・・・・・・」
「俺の目的は残党軍を殺す事じゃない。コロニーを止める事だ! だから・・・君を殺す事はしない」
 セフィウスがその場を後にする。
 クルセイドは目を丸くした。
 まさか戦場で助けられるとは、思ってもいなかった。

 残党軍の作戦は失敗したかに見えたが、残党軍は強引にコロニーを落とそうとした。
 コロニーの加速が急激に早くなる。
「くそ・・・・! 止められないのか!」
 焦るデュライド。
 それは誰もが思っていた。
 そんな時。
「全軍、退避しろ!」
 リエンからの指令。
 これから何が起きるのか分からないが、言われるがままに退避したデュライド達。
 すると、戦場に一筋の閃光が走った。
 核ミサイル。
 それが放たれたのだ。
 核の光に包まれ、コロニーは粉々に砕けた。
 残党軍の作戦は失敗に終わった。

 結末と言うものは訪れる時は本当にあっさりとしているものである。

 戦闘終了後、残党軍のメンバーは連合に捕まり全員捕虜となった。
 それはもちろんクルセイドも同じ事。
 捕虜となった彼らを護送するためにフエンは護送車の助手席にいた。
 誰も皆喋ろうとしない。
 そんな気ではないのだろう。
 やがて拘留所についた。
 護送車から捕虜が次々と降りていく。
 クルセイドが護送車から降りた。
「フエン・・・・・とか言ったな、セフィウスのパイロット」
「え・・・・? あ、はい」
「もう少し早くにお前に出会っていたらな・・・・・・・」
「おい、さっさと歩け」
 クルセイドは拘留所に入っていった。
 捕虜が全員は言った時、拘留所の門が閉じられた。
 風が吹き抜けた。
 4日間の構想は無事、幕を閉じた。
 だが世界には様々な思いを持つ者がいる。
 ロイドやハイウェル、クルセイド。
 パトリックやクルーゼ。
 フエンは改めてその意味の重大さを知った。

 そして世界は混乱の渦に巻き込まれた。
 オーブは世界安全保障条約を受理し、地球連合軍に組することに。
 そのオーブ沖でザフト艦ミネルバは連合の待ち伏せを受けることになるが、突破。

 ガルナハンのローエングリンゲート突破作戦、ダーダネルス海峡での戦闘を経たミネルバ隊はベルリンで連合の巨大MS、デストロイと戦闘。
 ザフトのエースパイロット、シン・アスカの活躍でデストロイを撃破するものの、シンはその戦闘で彼の中で大きな存在となっていたステラ・ルーシェを手にかけてしまった。
 
 その後プラント最高評議会議長のギルバート・デュランダル議長により戦争の元はロゴスと言うことが判明。
 世界情勢は混迷に告ぐ混迷を極めていた。
 その戦いが終わるのは何時の事か。
 それは誰にも分からない・・・・・・・・。


(機動戦士ガンダムSEED DOUBLE FACE FINAL−THE LAST TRAGEDY−  完)



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