第二十二章 光の裁き

 ネオ・ジェレイド軍の地球攻略作戦「オペレーション・ジャッジメント・レイ」が発動された。
 地球にある新地球連合軍の主要基地は瞬く間に敵MSの襲撃を受けた。
 ワイバーン隊はオーストラリア、シドニー基地攻略隊と合流。
 オリジナルMSを主とした編成で基地を制圧。
 捕虜とした新地球連合軍兵の虐殺を行った。
 シせりアもリエーナも、いつもは明るいグリーテスもこれには賛同しかねた。
 だが彼らの艦にはハイウェルが乗っているのだ。
 ここで逆らえばどうなるか。
 仕方なく兵を殺した。
 そして殺したその手を憎んだ。
 こうして「オペレーション・ジャッジメント・レイ」は順調に進んでいった。
 ・・・・・・・一箇所を除いて。
 新地球連合軍パナマ基地。
 さすが新地球連合軍の中枢を担うだけあってMSの数が多い。
 多少てこずっているものの問題はない。
 理由は簡単だ。
 新地球連合軍の戦力は既に旧式化しつつあるストライクダガーにデュエルダガー、良くて105ダガーなどのMSで組まれている。
 それに対してネオ・ジェレイド軍は空や海から攻め入るため強襲作戦を取っていた。
 さすがに空や海からでは対処しきれない。
 更に戦車などの旧世代の兵器の姿も見える。
 パナマとはいえ、戦力差は歴然だった。
 そんな中でも一機のMSが頑張っている。
 バスターダガーだ。
 見たところ他のバスターダガーと同じなのだが、動きがまるで違う。
 このバスターダガー、外見は同じだが中身はかなりのチューンが施されている。
 パイロットはディーア・ヴァレンティ。
 パナマ基地のMSパイロット。
「はああああああっ!!」
 気合とともに腕にマウントされたビームサーベルを抜く。
 ベルゼブを一蹴し、肩の「220ミリ3連装ミサイル」を放つ。
 続いて左腕に構えた「94ミリ高エネルギー収束火線ライフル」と「350ミリガンランチャー」を交互に放つ。
 ディーアはコクピットに鳴り響いくアラートで空を見た。
 空からリュミアーが無数に押し寄せる。
 それらを狙っている暇はない。
 空に向かってミサイルを放つ。
 当たったのは僅か数発で、敵機は一機も落とせていない。
 ディーアは舌打ちをした。
 地上からでは空の敵を落とせないことくらい分かっている。
 焦りが彼の判断能力を鈍らせる。
 再び鳴り響くアラート。
 目の前にベルゼブが迫りビームサーベルでバスターダガーの左腕を切り落とした。
「しまった!」
 ディーアの額に脂汗がにじむ。
 ここで自分がやられたら突破は確実。
 友軍機も数少ない。
 ここで負けるわけには行かない。
 再度ベルゼブにサーベルが迫る。
 ディーアは賭けに出た。
 ディーアの攻撃と敵の攻撃、どちらが早いか。
 超至近距離で肩のミサイルを放つ。
 サーベルがバスターダガーの頭部を貫いた。
 ベルぜブは爆散したがバスターダガーは辛うじて起動している。
 急いでサブカメラに切り替える。
 モニターが復活し、凄まじく荒れた戦場を映し出した。
 友軍機とも敵機とも分からない残骸が散らばっている。
 なおも敵機は押し寄せる。
 その数は尋常ではない。
 そろそろバスターダガーのエネルギー残量も危ない。
「こんな時、ファイナリィ小隊がいれば・・・・・・」
 いずれこのままではパナマは陥落してしまう。
 そんなことになれば新地球連合軍は壊滅し、地球はネオ・ジェレイドのものになってしまう。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 叫ぶが敵は停まってはくれない。
 ボロボロのバスターダガーを駆るディーア。
 右手にはビームサーベルを握り、走った。
 敵も反撃するためにサーベルを抜いた。
 そして、刃が交わったとき。
 あらぬ方向からの攻撃で敵機は爆発した。
 モニターの隅に一機のMSがライフルで敵を撃った。
 そして次々と現れるMSにディーアは息を呑んだ。
 ディフェニスにソルティック。
 105ダガーにヴァイオレント等、ファイナリィに配置されているMSばかりだ。
 そして空にファイナリィが現れた。
「よし、全機パナマ基地の防衛に移れ!」
 リエンが指示を出し、MSが散開する。
 ファイナリィ小隊の戦闘能力はずば抜けて高い。
 ディーアはファイナリィ小隊を背にバスターダガーを基地に戻した。

 戦闘が激化するパナマ。
 ヴァイオレントがディグニティ、ジャスティス・ブルーナイトとともに敵の駆逐に当たっている。
 見事に連携の取れた動きで敵を討つ。
「ラグナ、右から来るぞ!」
「分かっている! だが、こんな敵の数じゃぁ・・・」
 ジャスティス・ブルーナイトの高出力ビームライフルサーベル「セイバー」をライフルモードにして敵の胴体を貫く。
 それでも一向に数が減らない。
 こちらが撃破するよりも敵が投入してくる機体のほうが多いのだ。
「この・・・・・・クズどもがぁぁぁぁぁぁ!!!」
 ラグナが絶叫する。
 戦闘になるとややテンションの上がるラグナ。
 こうなったら止められない。
 ディグニティが後に続く。
 ヴァイオレントもビームソード「デュランダル」で敵を切りながら進む。
 別の場所ではストライクブルーとソルティック、105ダガーにフェルが奮闘していた。
 ソルティックのビームライフルとストライクブルーのビームライフルが同時に火を噴く。
 胴体を貫かれた敵機は成す術も無いままに空しく散った。
 105ダガーも奮戦するものの、やや能力的に劣る。
 そこをアルフのフェルがサポートに回る。
 さすが何年も行動しているものだけあって息がぴったりだ。
「はああっ!!」
 ストライクブルーの「9.1メートル対艦刀」が敵を切り裂く。
「ロイドさん、そちらは!?」
『ああ、何とか大丈夫だが・・・』
 ロイドの乗るディフェニスは敵を一機も落としていなかった。
 ロイドにとって彼らは元仲間。
倒すには忍びないのだ。
 なので頭部を吹き飛ばしたり、武器を破壊するだけで敵機を撃墜することは無かった。
 そんなロイドの下に空から援護のためにフリーダムとイージスセカンドが現れ、敵機を行動不能にさせた。
 戦闘に加わってからかなりのMSを撃ってきた。
 ようやく数が減り始めた。
 ファイナリィも「ギガノフリート」や「バリアント」で敵を攻撃している。
 すると、急に敵が撤退していった。
 これ以上の戦闘は無理と判断したのかどうか分からないが、とりあえずこれでパナマ基地を守り抜いた。
 だが現状は悲惨といえる。
 MSの残骸があちこちに散らばり、守り抜いたものの「無事」とは言いがたい。
 MSのパイロットが地上に降りてくる。
 皆その顔は暗く、沈んでいる。
 ファイナリィがパナマ基地の奥地に着陸し、クルーはパナマに降り立った。
 久しぶりのパナマ。
 その光景はあまりにも変わり果てていた。

 太平洋の海底に二隻の潜水空母がいる。
 ネオ・ジェレイドのものだ。
 互いに通信し合い、援軍に対する策を練っていた。
「だがあの戦力は強力だぞ? こちらが真正面から行って勝てる相手ではない」
「分ってはいるのだがね・・・・・・」
 この「オペレーション・ジャッジメント・レイ」が成功すれば地球でネオ・ジェレイドに逆らえるものはいなくなる。
 いるとしたら中立を保っているオーブだけだが、あそこもいずれ手にかける。
 それよりも今は目の前のパナマを落とすことに力を注ぎたかった。
「・・・・・これは、別の通信回線からだ」
 突然モニターに割り込んできたのはハイウェルだった。
 パナマを落とせば新地球連合軍は終わるため、ハイウェルはかなりの戦力をここにつぎ込んだ。
 そのため期待しているのだろう、彼らには。
『で、どうなんだ、パナマの方は』
 ハイウェルがたずねる。
「それが少々てこずっておりまして・・・・・・。何しろ援軍でファイナリィ小隊が来ましたので」
『それは言い訳だな。俺はそこにかなりの戦力を投入したはずだ。それを生かせないのは貴様達隊長の指揮の問題だな』
「な・・・・・・」
『お言葉ですが、それは少々言いすぎではないかと・・・・・』
 男と通信していた士官がハイウェルに言う。
 ハイウェルは態度を寸分変えず、淡々と言う。
『それでは俺の責任だって言うのか? 冗談はやめてくれよ。いいか、もしパナマを落とせなかったら、貴様ら隊全員極刑だ」「そんなバカな話があってたまるか!」
 男が返す。
 パナマを落とせなかったら極刑とは、ハイウェルも大きく出た。
 ハイウェルはなおも続ける。
『所詮貴様らは手駒だ。俺の言うとおりにしていれば間違いなくパナマは落とせる。いいな、俺の指示に従え。詳しいことは後で送る』
 手駒。
 その言葉に男は怒りを感じた。
 彼の言うとおりにすればパナマは落とせる。
これは間違いないだろう。
 が、手駒と言われてまで働く価値が果たしてあるのか。
 男は部屋を出てブリーフィングルームに向かった。

 ファイナリィ医務室ではサユがベッドの横にいた。
 フエンの看病をしている。
 もっとも、フエンは昏睡状態にあるため目を開けない。
「フエン・・・・・・」
 そっと呟く。
 それでもフエンは反応しない。
 届いているだろうか、サユの「想い」が。
「ここにいたのね」
「あ・・・・リィルさん」
 リィルが医務室に顔を出した。
 後ろにはヴァイスがいる。
 リィルが椅子に座る。
 サユの肩が細かく震えている事に気づき頭を撫でた。
 サユの顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
 それでも拭おうともせず、ただまっすぐな目でリィルを見ている。
 もともと優しい顔立ちだったサユの顔だが、今は哀しみで溢れている。
「大丈夫。フエン君にはきっと届いているわ。あなたのその優しい想いは。だから、大丈夫よ。ね?」
「・・・・・・・はい・・・・」
 それでもどこか悲しそうだ。
 ヴァイスは入るには入れない。
 そのため医務室の前でうろうろしている。
(おいおい、何やってんだ、俺は・・・・・。こんな所でうろうろと・・・・)
「こんなことしている暇なんて無いのになぁ」
「どうしたんですかぁ?」
 ひょっこり現れたのはエイス。
 ヴァイスの声が裏返る。
「な・・・・・・なんだ、エイスさんか・・・びっくりしたぁ・・・」
「?」
 首を傾げるエイスに対してヴァイスは息を整えている。
「それよりも、どうして・・・?」
「実はですねぇ、私、新しい機体を受領できるんですよぉ」
「へぇー、凄いですね」
 こんな忙しいときに新しい機体の受領をするのもどうかと思うが。
 で、調整をするためにパイロットスーツを着たままなのだという。
「あ、リィルさん」
「あらエイスじゃない。どうしたのよ。・・・・・・・・てか、ヴァイス! あんたなんで中に入ってこないのよ!!」
「ええ!? だって入れる雰囲気じゃなかったし・・・・」
 完全にヴァイスは不利だ。
 エイスはただ二人のやり取りを見ている。
 そして、出た結論が。
 「この二人はお似合いだ」という事。
「おーい、エイス」
「あ、ヴぇルドさん、どうしたんですか?」
「全員ブリーフィングルームに集合だって。リエンが」
「はぁい」
 ブリーフィングルームには他のメンバーが集まり、何かを話し合っていた。
 ホワイトボードにはパナマ基地の前傾が書かれていて、パイロットの名前が書かれている。
 どうやら分担を決めるらしい。
 こうすれば他方項からの進撃にも強くなる。
 その分各パイロットの技量が試されるのだが。
「で、担当を決めたいんだが、三人一組のチームを二つ、四人一組のチームを一つ作ろうと思う。誰が誰と組むかは各自で決めてくれ。いいか、ここが正念場だ。各自ベストを尽くすんだ!」
 リエンが激励を送る。
 その後の話し合いで、キラとアスラン、ロイド。
 デュライドとラグナ、アスト。
 ヴェルドとエイス、アルフにエメリアの三チームが防衛に当たることに。
 担当はまた別の話し合いだ。
 リエンはブリーフィングルームを出て、廊下を歩いている。
 ここでパナマを陥落させるわけには行かない。
なんとしても守り抜かなければならない。
「リエン!」
「何だミリアか。どうした?」
「すぐ来て!」

 ミリアに連れられてブリッジに入るリエン。
 モニターにパナマ基地の最高責任者ギルスが写っている。
「どうしたんですか?」
『つい今しがた、こちらのレーダーで敵影を確認した。一つは七時の方向、もう一つは四時の方向だ。こちらの戦力は既に発進させている。そちらも急いでくれ!』
「了解しました。総員、第一戦闘配備! MSパイロットは直ちに出撃せよ!」
 戦闘体制に入るファイナリィ。
 カタパルトハッチが三つとも開いた。
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」
 二番ハッチからフリーダムとイージスセカンド、三番ハッチからロイドのディフェニスが発進する。
 続いて一番ハッチからソルティック、エイスの新型機イクスダガー、アルフのフェルが、三番ハッチからストライクブルーが出撃した。
 そして三番ハッチからヴァイオレント、ジャスティス・ブルーナイト、ディグニティが発進し、それぞれの持ち場についた。
 キラ達は主に東を、ヴェルド達は北西を、デュライド達は南を守る事となった。
 押し寄せるベルゼブの大群。
 しかし以前に比べて気迫が無い。
 でも敵は撃ってくる。
 なんだか居たたまれない気分になりながら、皆は戦場を駆けた。
 戦闘が開始してから数分、ディーアはパイロットスーツを着てうろうろしていた。
 愛機、バスターダガーは修理中。
 急かすようにディーアが言うが何の効果も無い。
 ディーアは早く戦場に出たかった。
 そして、皆と戦いたかった。
 こんな所で手をこまねいているのはディーアの性分に合わないからだ。
 外を見る。
 外ではディグニティとジャスティス・ブルーナイトが奮戦している。
 二機のパイロットの顔は知らないが、相当の腕の持ち主だ。
 そこへイルミナと同型機と思われる紺色の機体が援護に回った。
 なかなかのコンビネーションで敵を翻弄し、撃破している。
 彼らがいれば、何とかなるかもしれない。
 ディーアは確信に近いものを感じていた。

 その戦場ではまさに地獄絵図と言えるような光景になっていた。
 切り裂かれるMS。
 装甲が焼け落ちる。
 断末魔の悲鳴を上げるパイロット達。
 この光景にキラはあるものと被って見えた。
 大戦後期。
 地球連合軍アラスカ基地で起動したサイクロプス。
 それにより多くの人々が息絶えた。
 そしてザフトの開発したジェネシスによりまたも多くの人の命がこの世より消えた。
 どうしてこんな不毛な事を。
 キラの中で「SEED」が弾けた。
 ラケルタ・ビームサーベルでベルゼブの頭部を切り裂く。
 次の狙いを定めてビームライフルで敵機の腕を貫く。
 アスランの乗るイージスセカンドも獅子奮迅の活躍をしている。
 ディフェニスのダブルフェイスが唸り、敵を薙ぐ。
 だが動力部だけは避けており、爆発はしないようにしている。
 早くこの戦闘を終わらせたかった。
 そうすればこれ以上ネオ・ジェレイドの兵士達が死ぬ事はない。
 その一心でロイドは動いていた。
「もう・・・・・・これ以上は!!」
 ダブルフェイスを構える。
「やめろぉぉぉ!」
 思いっきり振り払う。
 敵機が一気に行動不能に陥る。
 これ以上の戦闘は彼らにとって何の意味も成さなくなる事くらい分かっているはずだ。
 なのにまだ退かないとは。
 次第に歯がゆくなる。
 それでも目の前に敵がいる限り戦わなければならない。
 それがMSに乗るものとしての宿命なのだから。

「第二機動隊の半数がやられました」
 それと同時にシンとなる本部。
 パナマ司令室。
 ギルスは考えていた。
 確かにファイナリィ小隊は頑張っている。
 だが敵はどんどんやってくる。
 決断のときは迫られている。
 パナマを捨てて逃げるか。
 逃げずに戦うか。
 あるいは。
「ファイナリィに入電しろ。今より我々はこの基地を放棄し、脱出する。貴官らは脱出までの時間稼ぎをしろと、な」
 兵士がファイナリィに入電し、司令室から兵士達が退避していく。
(すまんな、リエン・・・・・。だがこれも、次の時代へ繋ぐためだ。今ここで、我等が倒れるわけには行かないのだ)
 ギルスは戦場に背を向けた。

「あぁっ!? ちょっと待てよ! おい!」
 リエンが言うが、入電内容は変わらない。
 ブリッジクルーがリエンを見る。
「どうしたんですか・・・・・?」
 ミリアが恐る恐る尋ねる。
「上層部の奴ら、逃げやがった・・・・・・・!」
 その言葉に全員の顔から血の気が引いた。
 結局彼らは大戦時と変わらない事をしたのだ。
 下の者達を見捨て、逃げ、生きながらえようとしているのだ。
 もちろん、その裏に何があるかなど、リエン達が知る余地も無い。
「全員が逃げるまでの間、時間稼ぎをしろってさ!!」
 吐き捨てるように言う。
 ファイナリィ小隊は見捨てられた。
 それも突然。
 その事はパイロット達にも伝えられた。
 皆、信じられないと言った表情だ。
 特にキラは大戦時も同じことを味わっている。
「くそ、どうなってるんだ! この軍は!!」
 ヴェルドの声が響く。
 ファイナリィ小隊の攻撃の手が止まったのを良いことに、ネオ・ジェレイド軍が総攻撃を仕掛けた。
 もはや守るべきものなど無い。
 この戦闘は無意味だ。
 誰もが思っていた。
 が。
 一つの閃光がそれを吹き飛ばした。
「諦めちゃだめです、ファイナリィ小隊の皆さん!」
 見るとバスターダガーが出撃していた。
 左腕もまともに直っていない、ボロボロの機体だ。
 そのパイロット、ディーアは叫ぶ。
「俺達はこんな所で立ち止まっちゃいけないんだ! パナマ基地に誰もいないのなら、今度からファイナリィ小隊の皆さんが所有すると良いでしょう?」
 その事を聞いたリエンは顔を上げた。
「そうだ・・・その手があったか。たぶんまだ物資とか大丈夫だろうし。この際パナマ基地を俺達のものにするか!」
『ええっ!?』
 驚くのも無理は無い。
 しかし、もしも基地をリエン達のものにできれば当分の間は何の心配も無くなる。
 MSの整備もできるし、補給もできる。
 そして、何よりフエンの治療もできる。
 そう考えると、上層部の撤退も決して無駄ではないと言える。
 逃げた事には腹が立つが、プラス要素が大きい。
 とにかく今は基地への被害はなるべく避けたい。
 全機に反撃命令が出た。
 ファイナリィ小隊は反撃に出た。
 それからの反撃により敵MS部隊を全滅させたファイナリィ小隊。
 そしてロイドは敵潜水空母に国際救難チャンネルで撤退を呼びかけた。
 さすがに敵も驚いていた。
 もう戦力が尽きたのか、敵はすぐに撤退して行った。
 オペレーション・ジャッジメント・レイは成功に終わった。
 地球上の地球軍基地の大半はネオ・ジェレイドのものになり、地球軍は敗退を余儀なくされた。
 唯一落とせなかったパナマ基地だが、ダメージは酷い。
 まあ直せば何とかなるのだが。
 今回のこの事件で新地球連合軍は窮地に立たされた。
 そして、更に混沌とした世界でフエン達は何を求めるのか。
 全ては、時の赴くままに・・・・・。



 (第二十二章  終)



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