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第二十六話  テスト返却と阿鼻叫喚

 6月5日、金曜日。

 関東大会地区予選まで残り2週間をきった今日この頃であるが。

 この日は、いつもと違いぴりぴりと教室がしている。

 5月の終わりに中間テストがあった。

 そして本日6月5日。

 今まで1教科もテストが返ってこないというのはどういうことか。

 全員悪すぎて、先生側が返さないというのか。

 そんな優しさはいらないが。

「気になる……」

「まあ、自分の頭の悪さがはっきりと数字に出る瞬間だからな。怖いわ」

 真と彼方が話している。

 二人とも赤点の心配はないわけではない。

 真は地理、彼方は古典が心配だとか。

 ちなみに遥は特に心配な教科は無し、七海はテスト後に転校してきたので今回は関係が無い。

 瑞希は……特に語るまでも無い。

「あーあ、どうなってんだか。この学校は」

「あれ、知らないんですの?」

 七海が言う。

 七海にはこの学校、テストは一気に返却するという。

 しかもホームルームで。

 一つ一つ返していたのでは授業が丸まる一つ潰れる恐れがある。

 そのためにこの学校ではテスト終了日からしばらくして、ホームルームで一気に返すという。

 一つ一つ返され、心配するよりも遥かに心労が少ないだろうが。

「その分衝撃は大きいんだよなぁ……」

「そんなの、勉強をしていれば余裕ではありませんこと?」

 実に正論。

 勉強をしないほうが悪い。

 とりあえず現在10:30分。

 ホームルームまでまだしばらく時間はある。

 心の整理をしなければ。

***

 こういう心配しているときに限って時間というものは早く過ぎるもので。

「うあ、もう昼休みかよ……」

 真は落胆した。

 昼休み終了後のホームルームでこの教室は地獄絵図となるだろう。

 気のせいだろうか。

 教室の空気が重い。

「まあそんなに心配しても体の毒ですわよ、彼方様〜」

「お前は……人事だと思ってんだよなぁ……」

「ええ、今回のテスト。私は何も関係がありませんもの」

 気楽な七海。

 真も彼方も鬱になる。

「だ、大丈夫だよ。二人とも普通にやっていれば」

「普通って言うけど……。普通じゃないからこうして心配しているわけで」

 特に生物の蝶の成長を書けというあの問題。

 こういうときに自分の絵心の無さを実に恨む。

「俺なんか古典で何を書いたかもう覚えてねぇよ……」

 彼方はもう重症。

 馬鹿のツートップになるのか。

 昼食を食べる手も次第にゆっくりとなる。

「これは重症ですわね……」

「うん、大丈夫かなぁ、二人とも」

 七海と遥の心配をよそに二人して同じように机に突っ伏す真と彼方。

 その時だ。

「はい皆、席につけー」

 真由が教室に入ってきた。

***

 異常なまでに教室は静かだった。

「んー、皆、何で黙ってるのかなー? 今から楽しい楽しいテスト返却なのに」

 真由が笑いながら言う。
 
 この人の悪い癖だ。

「はい、じゃあ今から返すからねー。……言っておくけど、覚悟しておいたほうがいいわよ?」

 教室中からため息が漏れる。

 真由が名前を呼び上げ、左上をホチキスで止められた回答用紙を配っていく。

 刹那、テスト結果を見たものたちからこの世のものとは思えないうめき声が放たれる。

「木藤くーん」

 彼方の番。

 彼方がテストを見る。

 笑い。

 首をかしげ。

 泣き。

 最後には真っ白になっていた。

「塚原くーん」

 来た。

 来てしまった。

 ああ、逃げたい。

 今すぐこの場から逃げたい。

「はい、これ」

 受け取ってしまった。

 中身を見る。

 地理、32点(平常点4点)
 
 古典、79点(平常点20点)

 現代文、72点(平常点10点)

 数学、68点(平常点20点)

 歴史、41点(平常点5点)

 化学、75点(平常点20点)

 生物、61点(平常点10点)

 7教科合計428点。

 平均は約61点。

 思いのほか点数が取れていたが……。

「低っ! 地理だけ点数が低っ!」

 地理だけ32点。

 赤点ラインぎりぎりである。

 ここまで自分は地理の成績が低くなると泣けてくる。

 ちなみに順位だか。

 クラス順位、19位。

 学年順位は47位。

 良いのか悪いのか。

「はい、今回始めてのテストにしては頑張りましたー。クラストップは有馬さん、続いて天道くんでした」

 有馬は照れている。

 こんなことなら彼女にテスト勉強を教えてもらうんだったと。

 いまさらながら後悔している真だった。

***

「ぃよう、どうだった、彼方」

「…………」

 へんじがない、ただのしかばねのようだ。

 そこで机の上のテストを見る。

 絶句した。

「まあ、その、何だ……」

「彼方様のテストをちょっと拝借させていただきますわよ」

 七海が見る。

 絶句した。

「どうしたの?」

 遥が見る。

 絶句した。

「だ、大丈夫ですわよ、彼方様。次こそきっと良い点数を取ることができますわ!」

 七海の励ましも、今の彼方はちくわ耳。

 右から入って左の耳へすーっと抜けていく。

「お前、テスト前になんか豪語してなかったっけ? 俺は頭が良い! とか」

「言ってねぇー……。つーかこんなはずじゃなかったのにー」

 自分ではそこそこ勉強できると思っていたらしい。

 が、今回は酷すぎた。

 赤点こそ無いものの、全教科全て40点台という悲惨なもの。

「うあー、両親に見せられねぇー」

 こういうとき、紙飛行機にして飛ばすと結構楽しい。

「まあ、ドンマイだ」

「……」

「何だ? そんなゾンビのような顔して」

「お前のも見せろー!!」

 真から無理やり奪い取る。

 中を満遍なく見た彼方はある問題で目が止まった。

 それは、生物のあの問題。

「ぶはっ! おまえ、なんだよ、この珍妙な生物は! ちょ、二人とも見てみ、この問題」

「……貴様!」

「……塚原くん、これ、なぁに?」

「まあ、何ですの!? この醜悪な生物は」

 そこまで言うかと。

「見てわからないのか。蝶の成長過程だよ」

「ちょう……? ちょうって蝶々?」

「そうだよ」

 そして笑いをこらえていたがもう限界だった。

 教室内が爆笑に包まれる。

「ぶっはははははははははは!! 今世紀最大のお笑い、キタコレ!」

「彼方! てめぇ! どこまで人を馬鹿にすれば……!」

「大体、20点の問題で「−10点」て……。ひー、ひー……初めて見た………」

 いっその事殺してくれ。

 真は心からそう願った。

***

 そんなテストの影響は部活終了後にも出ていた。

 それは夕食の時だった。

「さて、皆恒例行事行くわよー」

 涼子が張り切っている。

 そう言うとテストの解答用紙を取り出した。

 さくら寮の恒例行事。

 それはテスト終了後の順位決め。

 今までは一位が沙耶、二位が亜貴、和日、ひなた、杏里、涼子と続いている。

 さて、真はどこへ入るのか。

「ちょ、沙耶。お前またオール90点台か!」

「まあね」

「それに比べて涼子先輩はー?」

 和日が涼子のテストを見る。

 見るも無残なテストだった。

「もうちょっと勉強した方が良いですよ……涼子先輩」

「そう言うかっちゃんはどうなのよ」

 和日のテストを見る。

 平均的に高い水準でまとまっている。

 亜貴も平均85点と言う高い点数。

 ひなたと杏里は平均65点。

 真は平均61点。

 涼子は……ここで触れるのは止めておこう。

 さて、これで順位は。

 先述した順位で杏里と涼子の間に真が入る形となる。

 思っていたよりも頭が良いメンバーばかり。

 トップを狙うような事はしないが。

 せめて涼子には負けないようにしようと、真は誓った。

***

 夕食後は部屋で休むに限る。

 真は部屋で横になっていた。

 睡魔が襲ってくる。

 そのまま朝まで眠りに就いたのは言うまでも無い。

(第二十六話  完)


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