第七話 団結するレジスタンス
マタザとの話を終えたフィルモスは、一旦自分の部屋に戻り、次の会議に使う資料を整理しながらカップ1杯の熱いブラックコーヒーを飲み干すと、目的の会議室へと行った。
その部屋も、先程マタザと話した部屋とさほど変わらない面積の部屋だった。その部屋のソファーには既に客が待っていた。先刻の電話の相手、ルーグだ。
髪は白がかった紫色で肩まである長髪、ザフトの緑の制服を着ており、その上からでも、彼の体格の良さがよくわかる。左目はどういう理由かは知らないが、眼帯を着けていた。
「待たせてすまなかったな。早速だが、依頼の詳細を…――。」
「『アルカナの捕獲或は破壊』と『アバターの捕獲』。それ以上は何も言う事は無いでしょう。」
「……いや、まぁそれはそうだが…。」
ルーグ・スコルビオ、傭兵集団、『黒蠍』のリーダーである。
もっとも、彼等の本業は、宇宙空域に無数にある衛星、小惑星等から資源となるものを回収し、売買することだ。傭兵としての腕も卓越しているが。
「仕事内容の確認よりもアルカナのスペックを見せてもらえますか。」
「ああ。これがアルカナのスペックカタログだ。で、これがアルカナの戦闘記録だ。」
フィルモスはアルカナのスペックの書かれた書類をルーグの前に置きながら、手元にあったリモコンを操作した。すると、部屋の照明がゆっくりと暗くなり、部屋の奥の壁がスクリーン――天井からスクリーンが降りてきた――になった。そのスクリーンには、アルカナ脱走時の戦闘映像が写されていた。そしてその映像からは、アルカナの凄まじい性能を窺い知ることが出来た。
「…機動力が従来の兵器とはケタ違いですね…。動きもMSとは思えない…。なるほど、これなら確かに対艦刀2本などという装備でも充分戦える…。更にビームシールドか…。」
ルーグは腕を組みながらその映像を見、アルカナの性能を分析していた。
「アルカナのスラスターとブースターはI2社の技術の粋を集めて造られた至高の一品だ。現存する兵器の中で最高の速度と加速度を持っている。何せ俺が開発したんだからな。その辺のMSじゃあ相手にもならねぇ。すげぇだろ。ん?言ってみ?すげぇって。」
フィルモスは隣で、自慢するかのように解説を入れていた。…最後は解説ですらないが。
「…DUELにDISCシステム…この2つがこの非常識な運動性の正体か…。」
フィルモスの解説を無視し、ルーグはカタログと映像を見ながら分析を続けていた。フィルモスの解説は空回りして、まるでギャグが滑った直後のような気まずい(フィルモスだけだが)空気だった…。
「……。」
フィルモスは手元にあった書類を筒状にし…
パコン!
ルーグの頭目掛けて振り下ろした。
「…何するんですか。」
「無視すんなよ!なんか反応しろよ!」
「…あ、すみません。全然聞いてなかったもので。で、どうしました?」
「……もういいよ…。悲しくなってきた…。」
フィルモスはがっくりと肩を落とし、深いため息をした。
いかん、気持ちを入れ替えねば…。
「それで、アルカナはどうだ? 倒せるか?」
先程とは打って変わってフィルモスは真面目な顔つきになった。
「予想以上に性能が高いですが…まぁ、なんとかなるでしょう。」
「そうか。頼もしい限りだ。ああ、それとだな、さっきお前が話を止めたから言えなかったんだが、今、アルカナは地球軍のサンタレン基地の近くにいる。パイロットがパイロットなだけに、まさか地球軍に協力するとは思えねぇが、アルカナが地球軍の手に渡るのだけは絶対阻止しろよ。」
「了解です。お任せください。」
ルーグは不敵に笑った。
「おお、かっこいい!」
アルナは服を新しいものに着替えてトイレから出てきたソウを見て言った。
トレンチ・コートとでもいうのだろうか。長袖、長裾の真っ黒なコートだ。
ドリアードがレジスタンスに仲間になるのなら、とくれたものだった。
レジスタンスの制服のようなものらしく、造りはかなり頑丈だ。それにこの長袖、長裾のコートなら、ソウの機械の体を隠すこともできる。
今、ソウはこのコートに加え、同じく黒いシャツとこれまた黒いズボンを身に纏っていた。
「でもこれ、ちょっと黒色が多過ぎる気がするけど…。」
慣れない服装に、ソウは違和感を感じていた。
「あら、素敵ですよ。ソウ様。」
声のする方を見ると、ドリアードがこっちに向かってきていた。
「そうですよね!ほら、ドリアードさんもかっこいいって言ってるよ?」
「ええ。よくお似合いですよ。」
「…そう…ですか?」
自分のファッションセンスに自信の無い(というか、ファッション自体あまり興味が無い)ソウはドリアードの意見を受け入れることにした。
そもそも、ソウはこれまでに独りで服を選んだことがなかった。大抵はアルナ等友達に選んでもらっていた。
「大丈夫よソウ。今のあんたは充分かっこいいって!」
「…う〜ん…。でもこのジャラジャラしたチェーンとベルトだけでも外したいんだけど。邪魔でしょうがなくてさ。」
「ダメ。それがかっこいいんだから。」
「……。」
「ところでソウ様、アルナ様、お2人の部屋のキーをお渡ししますね。」
そう言ってドリアードは、2人に1人ずつカードキーを渡した。…このバカでかい基地は新入りにも個室が与えることができた。
自分の部屋をもらえたのだから、2人は早速自室へ行ってみることにした。2人の部屋は少し離れてあったので、アルナはもう少し奥の方まで進んでいった。
「じゃ、また後でね。」
「うん。それじゃ。」
ソウは自分の部屋を見つけるとカードキーを通し、扉を開けた。
中は基本的に寝るだけのためのような、狭い部屋だった。全体の広さは畳6枚分はあるのだが、ベットと簡素な机のせいで、床の部分は畳3畳程度だった。
それでも個室なのはうれしいものだ。
ソウは部屋の1/3を占領しているベッドに仰向けになった。が、まだ眠いわけでもないので、少し建物内をうろついてみることにした。他の人への挨拶もかねて。
ピケルに少しは案内されたが、まだ建物内の構造はよくわかってないので、とりあえずソウはさっき居たMS格納庫まで行ってみることにした。
そこには、アルカナや、さっきのレジスタンス達のMSがあった。
「あ、お〜い!そこの青い髪の人!」
声のした方向に振りかえってみると、そこにはソウと歳が近そうな青年がいた。
「あんた、あのアルカナのパイロットッスね?」
「ん?…ああ、そうだけど…?」
「オレ、ドマン・バドっていうッス。あそこのジンのカスタム機のパイロットッス。よろしくッス!」
どうやら先程のMS達のパイロットの1人らしい。
笑ったような細目、シャープな顔つき、やたらツンツンした黒い髪、皮製らしく、妙な具合に肩と背中が露出したシャツ、そしてジーパンといった格好だ。背丈はソウより5cmほど低い。
「ああ、俺はソウ・クレスト。よろしく。」
「ソウ君ッスね。よろしくッス。こんなところに何しに来たッスか?」
「いや、この基地をいろいろ見ておこうかと。さっきピケルって子に少しは案内されたけど、把握しきれなかったから、もう一度見ておこうかと思って。」
「そうッスか。じゃあ、ここのMSだけでも見ていくッスか?案内するッス。オレの機体の整備もあとはメカニック達に任せられるんで、暇だったんスよ。」
このドマンという男、少々お節介で人見知りしない性格のようだ。最もソウは大して気にしていないが。
「ああ、じゃあ頼むよ。」
ソウはドマンの申し入れを受け入れた。
「こいつがオレの機体、『ボイス』ッス。」
ソウは最初に、ドマン自身のMSへと連れられた。
『ボイス』と呼ばれたそのMSは、ヘッド部分と後のバーニアは深紅色、全体的には焦茶色と薄茶色の2色と、ヘッド部分と同じ色の深紅のラインでカラーリングされていた。
「なんで『ドマン専用ジン』とかじゃなくて『ボイス』なんだ?」
ソウが聞くと、ドマンは一瞬ニヤリと笑い、そのまま何も言わずにコクピットへ入るためのエレベーターに乗った。エレベーターで上に上がり、コクピットに入ると、その中にあったハンズフリーマイクを手に取った。
「コード[CROUD]、ボイス起動!」
マイク越しにドマンがそう叫ぶと、ボイスのカメラアイが鮮やかなピンク色に光った。
「…ああ、なるほど。音声入力ができるから『ボイス』なのか。」
ソウは合点がいったといった様子で、ボイスを見ていた。
「そうッス。こいつはオレの声でOSとかプログラムなんかをいじることができるッス。だから、戦局に合ったプログラムに戦闘中に簡単に換えられるんス。」
エレベーターでこちらに戻って来たドマンがソウの解答を肯定した。
「アルカナのDISCシステムと似ているな…。」
ソウが呟く。
「そりゃそうッスよ。こいつの親はイリュージョン社らしいスから。」
「そうなのか?」
「そうらしいッスよ。ドリアードさんがジャンク屋を通して買ったMSに、イリュージョン社から買い取った試作OSを元に造られた機能らしいッス。オレもよくは知らないッスけどね。でも、ここのMSは、どれもこれもちょっとはイリュージョン社のOS技術が流用されているらしいッスね〜。」
ドマンの話を聞いてソウは複雑な気分になった。ここにはイリュージョン社の影があるのか?そうならあまり安心はできないかもしれない。軍ではないが、恐らく最新鋭であろう機体を持って脱走した自分を、逃がしたままにはしないだろう。
このようにソウは考えていた。実際、その結論は正しいのだが、理由はアルカナではなく、自分自身ということは気付いていなかった。
「もしも〜し、ソウ君?次行かないッスか?」
ドマンは次のMSの所へ早く行きたいらしい。既にソウの居るところから10m以上遠くにいた。
「ああ。今行くよ。」
…とは言え、ソウ達には他に行く宛てが無いのだから、今はここに居る以外しょうがない。その時はその時だ。とりあえずソウはそう思うことにした。
ソウはドマンの方へ歩いていった。
次のMSは、さっきガウルが乗っていたシグーだった。黒と白のツートーンでカラーリングされていて、兵器とは思えない、スタイリッシュなデザインだ。
「こいつは『シャッフル』って名前ッスね。ガウルさんの機体ッスね。」
「『シャッフル』…?」
「こいつも特別な機能持っているらしいんスけど、ガウルさん教えてくんないんスよ。機能名しか教えてくれないッス。」
「そうか…。」
シャッフルというMS、外見はカラーリング以外は、特に変わったところの無い機体だ。
「これはあまり知らないんで、次のを見に行くッスよ。」
「了解。」
3番目のMSは、ピケルの乗っていたディンだ。カラーリングがレモン色やピンク等で、かわいい外見になっている。
「これは『アイズ』ていうッス。ピケルちゃんの愛機ッス。」
「『アイズ』…。」
「ええと、確かカメラでの視界範囲と精度とかレーダーとかが普通より優れてる機体ッスね。」
「という事は、偵察とか哨戒が主な仕事って事か…?」
「もちろんそれもコイツの得意分野ッスけど、戦闘もできるッスよ?ピケルちゃんの腕がいいからッスかねぇ。」
確かにさっきの戦闘は凄かった。あのビームライフルの雨を軽々と避けていたのだ。並の技術ではない。
「あとピケルちゃんはコイツにメビウスのレールガンの強化したのを装備させてるスね。なんか普通の機関銃じゃ物足りないって。」
「ドマン。」
「なんスか?」
「あのピケルって子は何者なんだ?まだ子供なのになんであんなに強いんだ?」
「あ〜〜…それは…あの子はこのレジスタンスができた初期の頃からいるみたいッスから、最近になって入った俺はよく知らないんスよ。」
「そうか…って最近…?このレジスタンスは1ヶ月前にできたんじゃないのか?」
「オレは2週間くらい前に入ったッス。」
「そういうことか…。」
ソウは、ピケルがかなり気になっていた。あのMSの操縦技術は相当高いハズだ。一体彼女の正体はなんなのだろう?
最後のゲイツのカスタム機は、他のMSより改造の度合いが顕著だった。
どす黒い赤色と漆黒でカラーリングされており、その姿は禍禍しかった。
マニピュレーターの両方の甲の部分には、甲に垂直に7mほどの長さの白い棒状のものがくっついて、(それはシリンダーの中にもう一本の棒が入っているという形状だった)今は根元の間接で曲がっていた。
「これは『ウォーリァー』って言うッス。アルカナを除けば、ここのMSの中では一番強い機体ッス。」
「『ウォーリァー』か…。このMSのパイロットは知らないな…。」
「あ、ソウ君はまだデュミ姐さんには会ってないんスか。多分今頃あそこのハッチの辺りで…。」
「残念。あんたの後ろにいるよ。」
2人が振り向くと、壁に寄り掛って腕を組みながらこちらを見ているる女性がいた。
身長は160cmくらいだろうか。ボブカットで揃えたやや紫掛かった黒色の髪と緑色の瞳、若干濃いグロスが大人の女性の雰囲気を出している。顔もやや浅黒く、アジア系の美人だ。渋緑い色のタンクトップに、そのタンクトップ以上に濃く暗い色で、恐らくどこかの陸軍の戦闘服なのであろうズボンを履いている。首にはロケットのようなものを身につけていた。
スタイルも、グラビアアイドルのようなバスト、ウエスト、ヒップ(と言ってもソウは別にそんなに凝視して見てはいないが)だった。
「あ、なんだ。後にいたんスか。あ、こちらはあのアルカナのパイロットのソウ君ッス。」
「ああ、あんたがそうなの?あたしはデュミナ。デュミナ・ヴァルよ。」
そう言って、デュミナはソウのすぐ前まで近づいてきて、顔をソウの顔の至近距離まで近づけ、そのまま目線をソウの頭からつま先までじっくりと眺めた。
「へぇ〜…。サイボーグって聞いたから、もっとそれっぽいのを想像してたけど、普通とあまり変わらないわねぇ。」
どうやらデュミナはソウの機械の体に興味があったようだ。
「…こうやって長袖の服を着ている分にはわからないさ。」
ソウは内心、少しムッとしていた。彼女は自分を人間として見ていない気がする。奇妙なおもちゃでも見ているといった感じだ。
しかし同時に、そんなものかもしれないとも思った。やはり自分の体は珍しいのだ。興味本位で誰かが自分に近づいてくることも、この先何度もあるだろう。
デュミナは、そんなソウの心情を察知したのか、1歩身を引いた。
「おっと、ゴメンゴメン。怒らせちゃった?アルカナを操縦できるのってサイボーグだけだって聞いてたからさ、ほら、やっぱりサイボーグってちょっとは興味持っちゃうじゃない?君がどんな子なのか知りたかっただけなのよ。」
「え!?ソウ君ってサイボーグなんスか!」
ドマンが心底驚いたように言った。彼はソウの事を知らなかったらしい。
「ちょっとあんた、ドリーちゃんの話聞いてなかったの?前に言ってたじゃない。アルカナって機体があって、その機体には普通の人間は乗れないから、アバターっていうサイボーグが乗っているって。」
「…そうだったッスか?」
「ハァ…。まったく、これなんだから、あんたって奴は…。どうせまたあんた居眠りしてたんでしょ。」
「ひどいッスね〜。オレ、ここ1週間、ミーティング中に寝ることなんて無かったスよ!」
「へぇ〜…。どうだか。」
2人が他愛もない口喧嘩を始め、一人浮いてしまったソウは、目の前のゲイツのカスタム機、『ウォーリァー』を眺めていた。
見ればみる程に禍禍しい色だ。しかも、軽量化のためか脚部や胴体などがシャープになっていたりと、フォルムが悪魔のようになっている。(ただし、ソウは今までにゲイツは見たことがなかったので、元々こういうフォルムなのだと勘違いしていた)
そして、気になるのが両手の甲に付けられた長い棒状のものだ。何となく武器なのだということはわかるが、使い方がわからない。手の甲から垂直に棒があったって、それを振り回して戦うのはおかしな感じだ。
「このMSの…――」
「何?」
「何スか?」
ソウがボソッと言った時、後で口論をしていたドマンとデュミナがいきなりこちらに振り向いた。どうやら2人ともソウの一言が気になったらしい。
突然のことだったので、思わずソウはビクッとなった。
「…びっくりした…。いや、このMSの手の甲についているものは何なのか、って思ってさ。」
「ああ。『ギルティア』のことね。今度戦闘があったときにみせてあげるわよ。あれでの戦い方をね。」
「じゃあ武器なんだ。」
「ええ。使い方は次の戦闘までのお楽しみ。さぁ、整備が終わったんなら早く談話室に行くわよ。ドマン、わかってるでしょうね?」
「フフ。姐さんじゃオレにはまだまだ勝てないッスよ。オレの連勝記録を伸ばさせてもらうッス!」
「…連勝記録…?」
「ああ、チェスのことッスよ。良かったらソウ君もやるッスか?」
「じゃあ頼むよ。…チェスか。久しぶりだな。」
「あ、ソウ君やったことあるんスか。」
「うん。」
「じゃあ手加減無用ッスね。悪いけど容赦しないッスよ〜?」
談話室
「…チェックメイト。」
「ええ!?また?そんな…。」
ソウはルークの駒をドマンのキングの真横に置き、これで5回連続でドマンにチェックメイトをかけていた。
「すごいわねぇ…。ドマンはここでは一番強かったのに、あっさり勝っちゃって…。」
「ソウさん、激強ですぅ〜!」
ギャラリーにいたデュミナと、途中から来たピケルが感嘆の声をあげた。今や、談話室にはこのようなギャラリーでいっぱいだった。
「も…もう1回ッス!」
尚もドマンは勝負を挑んでくる。
「ああ、いいよ。」
ソウもあっさり受け入れる。
「やめとけやめとけ!お前また負けて終いには有り金全部持って行かれちまうぞ!」
ギャラリーから野次が飛んで来た。
今、2人は金を掛けて勝負をしていた。ドマンが持ち出してきたのだ。
(またカモが1人、やったッス!またボロ儲けッス〜♪)
等とよろこんでいたのだが、…完全に『カモ』にされてしまったようだ。
「う…うるさいッス!ソウ君!これで勝ったら掛けた金全部返すッスよ!いいッスね!」
…ムチャクチャである。もっとも、これで勝たないとドマンは所持金が無くなってしまうのでわからないわけでもないが。
「いいよ。じゃあ俺が勝ったら…どうする?俺が掛けると君が掛ける金額には大分差があるけど。」
…ソウもソウで中々むごいことを言う。
「う…、……じゃ、じゃあ、次の出撃の時にボイスに『借金地獄』って書いて出るッス!」
…意味がわからない。ソウには何の得も無い話だ。
「ふ〜ん…。まぁいいよ。それでも。」
なんでソウも認めてしまうのだろう…?
数十分後…ドマンは泣きながらペンキを持って格納庫へ走って行った。
机に残った金をソウが自分の懐にしまい終えると、談話室にガウルが入ってきた。
「今、ドマン君が泣きながらペンキを持って走って行ったのですが…何か知っていますか?」
ギャラリー達はクスクスと笑っていたり、勝者のソウに話し掛けていたり、ドマンを少し哀れんでいたりと、あまりガウルの話を聞いていなかった。ガウルも、机にあったチェスのボードを見、なんとなく、事の真相を理解した。
「…ドマン君がいませんが、まぁいいでしょう。皆さん、次の作戦の予定ができました。」
さっきまで騒がしかった談話室が一転、張り詰め、緊張した雰囲気になった。ソウも、その空気を敏感に感じ取っていた。
「作戦の日は明々後日の6月29日、06:00です。これから作戦の説明をしますが、その前に、皆さんはもうご存知のようですが、そこの彼、ソウ・クレスト君とアルナ・フィルさんが新たに私達の仲間に加わりました。今回の作戦で、早速彼等にも協力してもらいます。いいですか?ソウ君。」
ソウは少しの間下を向き沈黙した。そして、ガウルの顔を見るといった。
「了解。」
(第七話 完)
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