AIで普通の動画を3D動画に変換する

第五話 白兵戦
 
 視界が赤く染まる。
 コクピットの温度も上昇している。
 スペックは果たして信用あるものだったのだろうか?
 アルナは大気圏降下中にそんなことを考えていた。そんな時だった。
「あ…どうしよう…。」
 不意にソウが呟いた。
 どうしよう…?何が…?嫌な予想が頭をよぎる。
「え…?何が…?」
 恐る恐るアルナが問う。
「いや、降下場所考えてなかったなって思って…、……アルナ?」
 ソウの顔面をアルナの手の甲が襲った。

 結局アルカナは南米、アマゾン川中域が近くに見えるところで降りた。降下したらそこが真下だからだった。もう空は漆黒の色だった。アルカナは川のほとりで片膝を立たせてしゃがみこんだ。
「う〜〜〜ん……。やっぱ地球は気持ちいいわよね〜〜。」
 コクピットから這い出て来たアルナは、外に出るや否や、思いっきり背伸びをしながら言った。ソウも遅れて出てきた。鼻の部分をしきりに気にしている。
「ったく…。何も裏拳で殴んなくたっていいじゃんよ…。」
 どうやらさっきの裏拳がクリティカルヒットしてしまったらしい。
 サイボーグになったとはいえ、皮膚のある部分には一応痛覚がある。とはいえ、普通の人間に比べれば、その痛みは大したことは無い。それでも場所が場所だからか、それなりに痛かった。
「そんなの、人に心配させるような事を言い出すあんたが悪いのよ。」
 腕を組んでそっぽを向きながら言い放つ。殴ったことを全く気にしていないようだ。
 ソウも、なんだか自分が悪いような気になってきた。本当はそんなことはないのだが。
「で、これからどうするのよ。地球に来たのはいいけど、これからどこに行くつもり?」
「ああ、それは―…」

ババババババババババババババババババババババ!!
 ずっと向こうの上空から轟音が聞こえた。。アルカナの着陸を察知し、偵察に来たのか、地球軍のものらしき戦闘ヘリが何機か飛んでいるのがおぼろげながらも確認できた。
「え…、何…?」
「まずい、アルカナが見つかったら…!」
 もしここでアルカナが見つかり、応援を呼ばれるのはなんとしても避けたい。かといって夜中の今、機体カラーに白の多いアルカナを隠すのは無理がある。とにかくヘリをどうにかしなければならない。
 ソウは急いでアルカナに乗りみ、アルカナを起動させる。目が輝き、アルカナが立ちあがった。DISCシステムがDUELを通してソウと繋がった。戦闘準備は万全だ。フェニックスをアルナの居る目印代わりに(攻撃力の高いバオウで戦うことにした)地面に突き刺す。
「アルナはこいつのそばにいて。絶対に動かないでここで待っているんだ。いいね。」
 外部スピーカーでそう告げた後、アルカナは夜の空へと飛び立った。

 敵―ヘリの数は4機だった。アルカナなら1機でも余裕で蹴散らせる数だ。しかし―…。 
(どうする…!?コクピットを狙うのは……。)
 わかっていたことだ。おそらくはさっきの宇宙での戦闘で。MSに乗ったからには、自分はいつか人を殺すことになると。そして、今は自分達が生き残るには、偵察隊は速やかに殺すべきだと。自分達の存在を本部に知らされる前に。
 しかし、そこまでの『理解』はしていた。あとは『覚悟』するしかない。
「……っく…!」
 バオウを両手で構えなおす。そのまま最初の標的へ突撃する。対象にされたヘリは、バオウにローターの一本を切り裂かれる。バランスを崩したヘリは地面へきりもみ回転をしながら落ちていき―…パイロットはパラシュートで脱出した。
 そのまま、同じ方法で2機目と3機目も破壊した。ヘリのパイロットは最初のパイロットと同じ結果になった。目の前のヘリは落とした。これでとりあえずは殲滅……いや…、
「もう1機いる…!」
 レーダーを見た時に、ソウは顔から血の気が引くのを感じた。そして自分の判断を後悔した。
 残ったヘリが、フェニックスに――アルナのいる所――へ向かっていた。考えてみれば、輝かしい金色の柄と美しい鋼色刃を持ったフェニックスがアルカナ以上に目立つのは当然だ。迂闊だった。
 既にヘリの機関銃はフェニックスを射程距離に入れていた。
 アルカナならここからヘリのいる地点まで数秒とかからない。大地を揺るがすほどの衝撃波を作り、常人ではとても耐えられないGを全身に受ける程の速度で、一気にヘリの正面まで近づき―…、バオウを思いっきり振り下ろした。
 バオウがヘリを真っ二つにする。そのまま空中で爆散した。ヘリの破片が燃えながら地面へ落ちていく。
 そこで初めて、ソウは人を殺したことに気がついた。
 呆気なかった。人を殺したという自覚が無い程に。まるで気付かずに足元の虫を踏んだ時程度にしか感じなかった。しかし、確実に人が1人、この世から消えたのは事実だった。
 アルカナフェニックスのそばへ着陸させる。フェニックスの裏に隠れているアルナが見えた
 小さな罪悪感と恐怖感を感じながらも、とりあえずこの場はなんとかなったことに安堵感を感じ、ほっと胸を撫で下ろそうとした時だった。
 アルカナのレーダーが9機のストライクダガーを見つけた。さっき落としたヘリのパイロットが応援を呼んだのだろうか?だとしたら、最悪のケースになってしまった。まだ戦闘は続くのだ。
 そんな事を考えていた時だった。ダガーの部隊の方からいきなり、爆発音が聞こえた。どうも1機のダガーが大破したようだ。
 アルカナは空高く飛翔し、とりあえず様子を伺うことにした。
 
 そこでは、ダガー8機が、4機のザフトらしきMSと戦っていた。いや、暗がりでよくわからないが、どうもそれらはザフト軍ではないらしい。アルカナのライブラリーではそれらのMSが「UNKNOWN」として処理されていたのがその証拠だ。
 その正体不明のMS達は、なかなか洗練された動きでストライクダガーと戦っていた。
 ダガーがビームライフルを連射する。それを予想していたかのように正体不明MSの1機、ジンのような外見のMSが紙一重で全てかわす。そこをシグーに似たMSが援護、重突撃機銃をジンもどきを狙ったダガーのコクピットへ正確に撃ち貫く。胴体に風穴を開けられたダガーは、数秒の硬直の後、爆散した。
 一方ではゲイツに酷似したMSがビームクロウを展開させ、ビームサーベルを構えたダガーに突進する。ダガーもシールドを構え、応戦しようとするが、ゲイツに似たMSは急にスラスターでジャンプ上昇し、ダガーの頭上を取った。ダガーが上の敵に気付いた時にはすでに遅く、エクステンショナル・アレスターがダガーのコクピットを貫いていた。

 そこまで見ていて、ソウはアルカナにロックがかけられていることに気付いた。相手はディンを彷彿とさせる形のMSだ。こちらに銃を向けてはいるが、どうも本気で戦闘するつもりは無いらしく、銃口を向けたまま、動こうとしない。こちらもバオウを構えはしたが、下手に動くこともできない。その時、向こうから国際救難チャンネルから通信が入った。
「青いMSのパイロットさん?こんなところで何やってるんですか?」
「……?」
 どうも女性、それもまだ若い、というか子供のような声だ。のほほんとした喋り方に、張り詰めた空気が一気に緩んでしまった。
「もしもし、青いMSのパイロットさんってば。聞いてます?」
「え…?あ、ああ、聞いてる。君は今、俺の目の前にいるディンのパイロットだね?」
「おっしい〜。確かに私はあなたの目の前のMSのパイロットですけどこれはディンじゃないんです。この子は…」
 ディンらしきMSのパイロットがそこまで話した時、下にいるストライクダガー3機が、こちらへビームライフルを連射して撃ってきた。アルカナも偽ディンも素晴らしい反応で攻撃をかわす。
 しかし、避け方は対照的だった。アルカナが機敏に一発一発を避けるのに対し、偽ディンは蝶が舞うようになめらかな動きで交わしていた。
「どうします?」
「?」
「私はとりあえずあのダガーを倒しちゃいたいのですが。」
「俺も同意見だ。」
「ならとりあえずここは手を組んでみます?」
「了解。」
 そう言った後、それまで回避に徹していた2機のMSは、一気に攻撃を始めた。
 アルカナが急降下して1機のダガーの胴体を一閃でなぎ払った。もう、MSの胴に攻撃するのも今までが嘘のように気にならなくなっていた。覚悟はまだ決まっていなかったハズなのに。
 一瞬でやられた味方に気を取られたもう1機のダガーを、偽ディンの銃が襲う。ダガーのコクピットに弾が何発も降り注ぎ、爆発した。その時には、最後のダガーもアルカナに胴を切り裂かれていた。
 ソウが周りを見まわすと、残りのダガーも、もう破壊されたか、逃げ出していた。もう東の空はほのかに明るかった。

 ソウは地面に突き刺してあったフェニックスの所へ戻った。アルカナを降り、アルナを見ると、いつのまにか服を着替えて、パイロットスーツはそのまま脱ぎ捨て、フェニックスにもたれ掛かって気持ち良さそうに眠っていた。
 随分マイペースだなと、ソウは今更ながらに思った。とりあえず無事で一安心。そこに、さっきの偽ディンをはじめとする「UNKNOWN」のMSが集まってきた。その音で、アルナも目を覚ました。パイロット達が降りて来て、こちらに向かってくる。皆ヘルメットは被っておらず、赤色の防弾チョッキのようなものを着ていた。シグーもどきから降りた男が話し掛けてきた。
「初めまして。レジスタンス、『HEAVENLY−SANCTUARY』リーダーのガウルです。」
 ガウルという男は顔に若干の笑みを浮かべて丁寧に自己紹介した。艶のある短めの黒髪、色黒で整った顔の男だ。多分、34,5といったところだろう。
「俺はソウ・クレスト。彼女はアルナ・フィル。」
 ソウも自己紹介をする。
「所属はザフトですか?」
「いや、俺はMSに乗ってはいるが、軍人じゃないんだ。」
「それは、どう言う事で?」
「…詳しく話そうとすると少し長くなる。だが、とりあえずそっちの敵にはまずならないと思う。」
「そうですか…。」
 そう言うと、ガウルは後にいたほかのパイロット達と話を始めた。何か相談しているようだ。しばらくして、ガウルが突拍子も無いことを言ってきた。」
「あなたが良ければ、私達に協力してもらえないでしょうか。私達を地球軍から助けて下さい。」



(第五話  完)


  トップへ