第21話 本陣強襲
たった一人で、戦況を引っ繰り返してしまった。
圧倒的不利に立たされていたダガー隊は、ギドーの乱入によって一気に形勢逆転したかのように思われた。
だが、
「隊長、なぜここに?アルカナはどうし…」
『デミス!ジンの姿を見たか!』
デミスの言葉を遮り、ギドーは切迫した口調で叫ぶ。
「いえ、確認していませんが…」
わけもわからずに質問に答えると、ギドーは忌々し気に悪態をついた。
『畜生、ふざけやがって…!』
「隊長?何を―」
『デミス!そいつら三人を連れて今すぐ基地に戻れ!』
「基地に?何故…」
『ハメられたんだよ、あいつらに!ここでの戦闘は全部囮だ!もうすぐレジスタンスのジンがサンタレン基地に奇襲をかけてきやがる。今すぐ戻って防衛しろ!』
これこそが『HEAVENLY−SANCTUARY』の仕掛けた戦術、《三つ目》がギドーに見せた光景、すなわち、本陣強襲である。
本来、サンタレン基地は近隣の鉱山からの有価金属の採掘とマナオスの治安維持を主目的とした駐屯基地だった。
当時は武装も治安維持に必要な程度で、MSは配備されておらず、数機の主力戦車が目を引く程度でしかなかった。
『HEAVENLY-SANCTUARY』が活動を始めてからは、何機かのストライクダガーが配備されるようになり、保有戦力も強化されたが、所詮は資源採掘と治安維持が主任務の末端組織である。大した武力強化はされなかった。
だが、それでも、最低限の防衛設備は持っている。
『HEAVENLY−SANCTUARY』程の量は無いが、サンタレン基地周辺にもレーダーや監視カメラ、歩哨が配置されており、陸空からの侵入は一筋縄ではいかない。
たった一機のMSが、おいそれと手を出せる程、粗末な守備ではないのだ。
しかし、水路なら?
南アメリカ大陸に広大に広がるアマゾンの大河を侵攻路には使えないだろうか?
陸戦型MSしか持たないレジスタンス相手では、地球軍も流石に水中は無警戒だったようで、水中用MSを索敵するソナーの類は持ち合わせていなかった。
そこに突け込む隙があったのだ。
まず数が多いダガー隊は一対多数の戦闘に強いシャッフルと高機動で且つ長射程のアイズで迎え撃つ。
サンタレン基地の最大戦力であるギドー、そしてスカイグラスパーのパイロットをソウ、デュミナがそれぞれ孤立させ、ガウル達の妨害をできないようにする。
こうして敵MSが出払った隙に、グーンのパーツを流用して水中潜行を可能にしたボイスが、サンタレン基地を襲撃するのが今回のもう一つの二大最重要任務である。
このような電撃作戦をするのなら、本来は更に歩兵を投入してより精密な制圧をしたいものだが、一般市民の有志である『HEAVENLY−SANCTUARY』には制圧作戦をこなすだけのスキルを持つ兵がいない。
サンタレン基地の機能を完膚なきまでに失わせることが、今回の作戦の目的である。
「おっと、そろそろッスね」
深度があまり深くなく、ともすれば機体を川底にぶつけてしまいそうになるのを何とか回避しつつ、ドマンはボイスをサンタレン基地のすぐ近くの川辺リまで近づけた。
潜望鏡を伸ばし、川岸の様子を確認し、危険が無いことを確かめると、ボイスは潜行用のパーツをパージした。
水中で外された潜行スクリューや簡易製の潜望鏡が、ゆっくりとボイスからパージされていく。
全てのパーツが外され、拘束を解かれたボイスは、大量の水を滴らせながら力強く立ち上がった。
全身に火砲とミサイルを装備したかつて無い重武装のボイスの姿が、そこにはあった。
砲口はいずれもベニヤ板を被せられ、そこからアルミ製のシートを被せ更にビニールテープで固定されていたため、砲身は水に浸かっていない。いつでも使用可能だ。
「さて…と。始めるッスかね」
背面に装備した、ミサイルを流用した急拵えの使い捨てブースターを点火し、ボイスは敵地へ強襲を開始した。
サンタレン基地 司令室
その頃には基地のレーダーでも、何者かがここへ向かっている事を把握していた。
「レーダーに反応有り。この速さ…対地ミサイル? い、いや、MSです!四時の方向、60マイル先からMSが向かってきます!到着まであと約290秒!」
レーダーを担当する士官の声が司令室全体に響いた。
「ふむ…それがギドーの言っていた別動隊…“本命”というわけか。
さて、まずは敵が何をするつもりか理解しておかねばな。敵の画像は出せるか?」
直前にギドーの連絡もあり、急な襲撃の割にメフィストは事を冷静に考えることが出来ていた。
「少し時間を…いや、今出せます」
担当士官が機材を操作すると、司令室で最も大きいディスプレイに襲撃者の姿が映された。
両手に突撃銃、両肩部にザウートの武装らしき2連キャノン砲、脚部にミサイルポッド、腰部にも投擲用の爆弾らしきものを装備している。
「ふむ、なるほど。いかにもレジスタンスらしい装備だ」
随所に装備された流用パーツを見て、メフィストは率直な感想を漏らした。
「なんだ?あんな規格のブースターなんて見たことないぞ?」
士官の一人が、敵機の仰々しさに驚いて、素っ頓狂な声を出した。
確かに、眼前のジンが背面に装備しているブースターは、既存のどの勢力にも見たことのないものではあったが、メフィストはその正体に感付いていた。
「対艦ミサイルだな」
とメフィストは呟いた。
「あれはザフトの水上艦に装備されている対艦ミサイルだ。弾頭を取り除き、推進部を無理矢理MSに付け、簡易的な使い捨てブースターにでっちあげたのだろう。乗り心地は最悪だろうが、既に実戦で使われているだけに信頼性は捨てたものではないだろうし、向こうの資金力的にもわざわざこのためだけに何処かに発注することなどできはしまい。あの程度が分相応だろうな」
訳も無いといった面持ちで、敵機の装備を推論したメフィストに、その士官は人知れず驚いていた。
「は、はぁ…なるほど」
彼は、これまでメフィストを戦のできない無能な将校だと侮っていた。
だが、今のメフィストからは、無能さなど微塵も感じとれない。
確かに『軍内部での政治的活動』といった直接戦火に晒されない後方支援を主任務としていたメフィストには、兵を率いて戦闘をする経験は決して多くはなかっただろうし、MSという兵器群にも馴染みが薄いのだろう。
だがこの男は、決して戦術に無頓着であったわけではなかった。
むしろ、いつ使えるかもわからないにもかかわらず、後方支援を主任務としていた頃から戦術を学び、『凡庸な将』と言える程度の実力はあった。
そして彼は、後方支援で培われた政治的、経済学的経験から敵がどのような兵器を所持しているかを、政治的、経済的な見地から推測することが出来る。
敵がどの兵器メーカーと結びついているか、敵組織の資金力からどのような兵器を所持しているか、そういったことを敵の装備や戦術傾向から洗い出し、敵の行動を推測することもある程度は可能だ。
比較的潤沢な資金を持つとはいえ、主戦力はあくまで少数のMSだけしかない『HEAVENLY−SANCTUARY』は、おそらくこのジンのカスタム機のみでの侵攻であろう。これを止めれば、敵の作戦は失敗であるはずだ。まして撃墜すれば、敵の貴重な戦力を削ることにもなる。
「総員、第一種戦闘態勢。基地内での戦闘が予想される。非戦闘員は速やかに地下シェルターに非難させろ。時間は無いぞ。速やかに動け」
風変わりな智将の采配が動き出した。
思ったよりも戦力が多い、とドマンは思った。
レーダーで確認した戦闘ヘリの機数は9機。
3機ずつ3チームに別れ、左右と前方から進軍してくる。
戦闘開始である。
ドマンは命じた。
「コードクラウド、全弾頭活性化、A1からA3、A7からA9へミサイル照準、射程距離に入り次第、射出しろ」
ドマンの命令を受けたボイスは、両脚に装備されたミサイルランチャーを左右それぞれに向けた。
さらにドマンは命令する。
「4-k19の《ALRLAM》3発をA4からA6へ射出」
ドマンは、おそらく彼以外には誰もわからないであろう、呪文の詠唱のような命令をボイスに下した。
その後、どこか遠くから何かミサイルのようなものが射出される音が微かに聞こえた。
それから数秒と経たない間に、メインカメラ越しに最大倍率で最前方のヘリを確認した。
瞬間、自動的に脚部のミサイルが射出された。
ほぼ同じタイミングで、前方のヘリ部隊も何発ものミサイルを放ち、それと同時に左右へ散開した。
今のボイスは細やかな微調整が出来ないブースターで飛行しているので、回避はピケルでさえも苦労するだろう。
だから、ドマンは回避でなく迎撃を開始した。
ボイスが両手に持つ2丁の突撃重機関銃をミサイル郡に乱射する。
だが、じゃじゃ馬のブースターは、機体を激しく揺さぶり、照準も上手く合わさせてくれようとしない。
高速で飛行するボイスに向かって、それ以上の速度で襲い掛かるミサイル、このままではボイスは確実に撃墜される。今、すぐにでも。
「…!!」
堪らずドマンはブースターをパージした。
その瞬間、主を失ったブースターが勢い良くミサイルに突っ込み、ミサイルをまとめて破壊し、巨大な爆発を起こした。
爆風をまともに受けたボイスはバランスを崩し地上に叩きつけられそうになる。
今度は元からジンの背中に装備されてるメインスラスターと足の裏にある補助スラスターを全力で作動させる。
なんとか体勢を建て直したボイスは、両手両足を地面につける、少々みっともない格好で着地した。
全身に過剰に搭載した火器が重すぎたため、バランスが崩れてしまったのだ。
ボイスのこの危険な隙をヘリに狙われなかったのは、パージした時にまだ余っていたブースターの燃料に引火して生じた爆発のためだ。爆炎が目眩ましとなり、爆風がヘリまでも襲い数瞬の間ヘリの行動能力を奪ったのだった。
ドマンはすぐに体勢を立て直そうと、機体を操縦した。
爆風をやり過ごし、未だ残る爆炎を避けながら再び攻撃を開始しようとボイスを目視したヘリのパイロットの一人で、このヘリ小隊のリーダーでもあるビルは、敵機がその一つ目でこちらを見上げているのに気付いた。今度は地に足をしっかりつけている。
こうなると、しっかりと照準を狙える敵機は、こちらのミサイルを迎撃してしまう。
両翼に散開していたヘリ隊が到着するまで機銃で威嚇射撃をしてやり過ごすよう命令しようとしたビルは、突如、左右で起きた爆発に目を丸くした。
両翼のヘリ小隊が、左右共撃墜され、全滅したのだ。
先程敵機から放たれたミサイルが、今になって左右のヘリ小隊を襲ったのだ。
こちらに飛んでこなかった時には『苦し紛れに放ったはいいが、照準が定まっていなかった誤射』だと思っていたが…。
直後、左舷の友軍ヘリから緊迫した声で通信が入ってきた。
『隊長!3時の方向よりミサイル接近!』
「なに・・・!」
どこから?いつの間に?
頭に浮かんだ疑問とは無関係に、ビルの体は回避行動を開始した。
操縦桿を思いきり捻り、ローターの回転数を最大に。さらにチャフをばら撒く。
同時に、敵機のジンに向けて、撃てるだけの対地ミサイルを放った。
ミサイル分の重量が無くなれば、機体は軽くなり、回避行動もとり易くなる。
更に敵をけん制することにもなる。
この瞬間だけ、ビルの戦闘ヘリはまるでアクロバット飛行をする戦闘機のような軌道をとった。
安全ベルトに体が食い込み、ゴオオォォォウッ!っという空気が捻じ曲がるような気味の悪い音がインカム越しでも聞こえる。
機体のほんの数メートル横を、超高速ミサイルが通り過ぎる。
チャフにつられたミサイルは、そのままビルの機体に直撃せずにあらぬ方向に飛んでいった。
だが、こんな真似が出来るのは、ヘリ操縦の実力で一兵卒からのし上がってきた熟練者のビルだけだった。
ミサイルの直撃を受けた僚機のヘリは、盛大に炎を吹き上げながら、奇妙な螺旋を描いて墜落していった。
パイロットは即死だ。仮に生きていたとしても、もう助けられない。
「くっそ・・・」
あのMSのパイロットを、八つ裂きにしてやりたい衝動に駆られたが、もう大してミサイルも残っていない戦闘ヘリ一機で出来ることなど、たかがしれている。
唯一生き残ったビルは、歯噛みする思いで、戦域から撤退した。
まさか、あれを避けるとは。
ドマンは、唯一落とし損なった戦闘ヘリ――というよりそのパイロットに、心底驚いた。
ALRLAM。
Advanced Long Range Land-to-Air
Missile(発展型長射程地対空ミサイル)の頭文字を取って名づけられたこのミサイルは、超音速、かつ正確に目標を捉え、迎撃する優れた性能を有する兵器である。
MSや戦闘機ならともかく、まさか戦闘ヘリで回避できるとは思わなかった。
もっとも、流石にこれ以上の戦闘は諦めたようである。その優秀なパイロットは機銃でこちらに牽制をかけつつも、速やかに撤退していった。
それは当然だろう。たった一機のヘリの火力程度で、遮蔽物の多いこのジャングルでMSと戦うのは無謀以外の何物でもない。
ブースターは失ったが、ここからならボイスのブースターでも大して時間もかからずに基地に到達できるだろう。若干進行速度は遅くなるが。
「コードCROWD、ブリッツモード」
ボイスのブースターの出力が限界まで上昇し、基地へ向けて猛然と邁進した。
「第1、第2機甲小隊、展開完了。第3、第4対地ミサイル小隊、展開完了まであと30秒」
ボイスの迎撃準備は着実に進んでいたが、メフィストは、たとえこちらがどれほどの迎撃体制を整えても被害は甚大になるであろうことを覚悟していた。
してやられた。
この基地での対MS戦は、ストライクダガーを用いるのがセオリーだし、そもそもそれ以外の対抗策はほぼ無い。
いくら戦車を並べ、誘導ミサイルを駆使しても、ジンとの戦闘で優位に立つのは難しい。
ヘリオポリスへのザフトの強襲作戦の時がいい例だ。地球軍の戦闘車両は悉くザフトのMSに蹂躙されていった。
だが、今はそんな事は言ってられない。散っていったヘリ部隊のためにも、この基地の陥落だけは絶対にさせられない。
その時、友軍のストライクダガー隊副隊長から通信が入った。
『司令部、聞こえるか。こちらデミス。今、全速力でそちらに向かっている。到着まであと400秒』
ギドーの指示で基地の護衛及び敵MSの撃破の任を託された4機のダガー達がこちらに向かってきた。
ありがたい増援だ。ダガー達なら、あのMSも十分に対処できる。
元々、ジンタイプのMSのパイロットのスキル自体は高くないことは、既にわかっていた。
だが、時間がかかり過ぎる。あと6分強の間、今の戦力だけであのMSを相手にしなければならない。
「こちら司令部。了解した。なるべく早く頼む」
メフィストはそう答えると、司令室の士官の一人に目をやった。
「先日の輸送部隊からの補給物資に《ブラックダスト》のバンカーバスターミサイルがあったな。あれを最優先で鉱山に隠せ」
「え、鉱山?地下シェルターではないのですか?それになぜ、今それを?」
「鉱山だ。レジスタンスが相手なら、あそこは地下シェルターより安全だ。この戦闘が終わればあれを使うときが必ずくる。なに、戦闘機1機とあれがあれば、あとは仮にこの基地が壊されようと、我々の勝ちになるさ」
ドマンはいよいよ目視でも確認出来るほどに、サンタレン基地に近づいた。
索敵を開始。すぐに戦車部隊、ミサイル戦闘車の存在を確認した。
戦車の砲塔がこちらを向く前に、機銃を撃つ。
鈍い衝撃音が響いたかと思うと、直撃を受けた戦車から火柱がたった。
赤外線誘導式ミサイルの照準を探知。
咄嗟にボイスは回避行動を取り、ミサイルの発信地へ今度は投擲用の爆弾を投げつけた。
放物線を描いて落下した爆弾が爆ぜ、戦闘車両を破壊した。
まだ戦車がいる。もう砲塔がこちらに向いて――
轟音。
戦車砲がボイスの脚部に命中した。
すかさず肩のキャノンで反撃。一瞬で戦車は鉄くずになった。
すぐに今の損傷を確認。メイン、サブ両方の動力パイプが破損している。まだこちらは大丈夫そうだが、装甲も変形し、足首と膝の可動部位に干渉している。
これでは間接同士が擦れ合い、あまり歩行を行うと間接部が壊れてしまう。
あまり動き回ることは出来ない。
少しの思考でドマンは敵ユニットよりも基地自体を優先して破壊することにした。
手近な建物――武器庫らしき倉庫めがけ、肩部のキャノン砲を放った。
武器庫という予想は正解だったらしく、先ほど破壊した戦車の何倍も大きい火柱をあげて吹っ飛んだ。
更に戦略的な価値のありそうな建物を探す。だが、戦車隊の砲撃に阻まれ、うまく索敵できない。
しかも、その戦車隊が陣取っている場所の背後には――…、
(ああもう!よりによってあんなところに…!)
戦車隊の背後には、有価金属を採掘する鉱山の入り口が見えた。
ここだけは破壊できない。
この鉱山は、『HEAVENLY=SUNCTUARY』にとって、いわば担保なのだ。
ドリアードは軍資金の融資を募るときに、敵基地を奪還した後にこの鉱山の採掘権を譲渡するという約束をしている。
ここを破壊してしまうと、主要な融資の一部が潰れてしまう。
戦車砲の攻撃を凌ぎつつ、ドマンは慎重に索敵を続けた。
敵の攻撃を凌ぎつつ、ドマンは目についた建物を片っ端から破壊した。建物が粉砕するときの煙を目くらましに、何台かの戦車やミサイル戦闘車も破壊する。
「これで、ラスト…!」
目につく限りの建造物をあらかた破壊し、そろそろ弾薬も尽きてきた頃になって、ドマンはようやく撤収の用意にかかった。
「こちらドマン。目標の破壊を確認。これより撤収するッス」
基地から速やかに撤収しつつ、ドマンはリーダーのガウルに通信を試みた。だが返事が無い。
「ガウルさん?応答せよ、ガウルさん」
どういうことだろうか。
ドマンは続いて、サブリーダーでもあるデュミナへの通信を試みた。
今度はすぐ、通信が繋がった。
デュミナからの通信越しに戦闘中らしき音が聞こえるが、まだ彼女は健在のようだ。
ガウルの時と同じ報告をする。
『こちらデュミナ。了解よ。すぐに戻ってきて』
「すぐ…ッスか?」
『最悪な状況よ。シャッフルは大破。それにブチ切れたピケルが暴れまくっている。おまけにあんたのところにも3機のダガーが向かっているわ』
「そんな…!? あの二人がダガー程度にやられるわけないじゃないッスか!」
すると、デュミナは忌々しそうな声を出した。
『シャッフルをやったのはギドーよ』
「え…?ソウ君は?」
『まだ連絡が無いわ。…あの子、あんな大口叩いておいて、ギドーに倒されたのかもね。とにかく、早く戻ってきなさい』
そう言うと、デュミナは一方的に通信を切った。
ソウが殺られた?
いや、先程のアルナとの会話では、通信こそ出来ないが機体は健在だったはずだ。
ドマンは、そろそろアルカナの戦闘地域に到着しているはずの偵察グループと通信をした。
『俺らが到着した頃には、アルカナは地球軍以外のMSと戦っていたぞ。それと、通信用の電線は途中で切られちまっている。とりあえず間に合わせで別の線を繋いでおいたから、トラップも通信も問題なしだ』
偵察グループのリーダーはそう告げた。
「別戦力のMS?」
『ああ。確かあれは《黒蠍》っつったっけか?腕の立つ傭兵部隊だよ』
その傭兵ならドマンも知っていた。傭兵とは名ばかりの、フィルモスの飼い犬だということも。
そして、《黒蠍》なら確かにアルカナに攻撃を仕掛ける理由もわかる。
ということは、通信が繋がらないのは彼らのせいなのだろうか?アルカナは相当に危険な状況なのでは?
「それで、戦況は?ソウ君は大丈夫なんスか?」
ドマンがそう聞くと、偵察グループのリーダーは、今度は少し面白そうに答えた。
『それがな、アルカナの奴、敵さんをまるで赤子扱いだぜ。いや強ぇ強ぇ」
状況がわからず、ドマンは首をかしげた。
(第二十一話 完)
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