第11話 オリオンのベルトを破壊せよ 《PART2》
初出撃だったんだ。
僕がまだ幼い頃にパパが病気で死んでから独りで僕を育ててくれたママを助けるために、僕は学校を卒業したらすぐに地球軍に志願した。
軍の訓練はとても厳しくて逃げたくもなったけど、ママを助けるんだって思いながらなんとか頑張ってきた。
配属先はMA部隊が良かった。だってMAみたいな大きい兵器ってかっこいいじゃないか。それに他より給料がちょっと高いんだ。
そんな風に思っていたら僕の配属先はなんとMSで戦う部隊だった!
信じられないよ!あのMSだよ!?地球軍の新しい主力兵器、《ストライクダガー》のパイロットになったんだ!MAよりも強いし何よりかっこいい!やったよママ!
間もなく僕はサンタレン基地っていう南米の基地へ転属命令が出た。そこで暴れているレジスタンスをやっつけるんだって。
レジスタンスなんて小っちゃな組織だもん、どうせ大したことないよ。正規軍の僕達が負けるはず無いじゃないか!
この初出撃で僕は大活躍してママを喜ばせてあげるんだ!
・・・そう思っていた。ついさっき、例のレジスタンスと交戦を開始するまでは。
「誰かー!誰か助けてー!ママー!」
ああ、なんで僕はこんな情けない泣き声を出しているんだろう…。目の前のどす黒くて気味の悪いMSの手から生えている棒が僕のMSのコクピットを貫こうとしているんだ!
その棒が僕のMSのコクピットに体当たりをする度に、コクピットはひどく揺れるし、ハッチはぐしゃりと歪むんだ。その内ハッチが持たなくなって、棒がコクピットまで届いたら僕は――…
嫌だ! 死ぬなんて! まだ1機も落としてないのに! まだママを喜ばせてないのに!
助けてよ!誰か助けてよ!誰かたすケテ…
グシャリ
「よし、まずは1機…!」
コクピット内のデュミナは不敵に笑いながら叫んだ。
デュミナの駆るMS,ウォーリァーの右手に装備されている《ギルティア》が一体のストライクダガーの胴体を貫いた。そのままウォーリァーは機能を停止したダガーをそのまま足で押さえつけ、《ギルティア》を引き抜く。引き抜いた棒には、MSのオイルや、パイロットの血や脂肪にまみれてグチャグチャに汚れていた。
《ギルティア》はウォーリァーの両手の甲に装備されている、杭打ち機のような兵器だ。普段は邪魔にならないように折れ曲がって収納されているが、戦闘時には手の甲に垂直に展開し、目標を掴んだ後にシリンダーに内蔵された杭打ち棒を目標に打ちつけて攻撃する。
威力はMAX時でMSの胴体を軽々と貫くが、デュミナはわざわざそれを弱め、数発コクピットに打ちつけて攻撃する。何故か。
それは相手を恐怖に陥れながら殺すためという残酷な理由があった。
エレンを無残な姿に変えた地球軍に与えられるだけ恐怖を与えてやりたかった。
「さぁ、お次はどいつ? ・・・・・・そこのアンタね」
ビームライフルをこちらへ構えようとしたダガー目掛けてウォーリァーは踊りかかった。
ソウとピケルがギドー・リジョン達と交戦を開始する5分前
シャッフル、ボイス、ウォーリァーの3機はアマゾンの熱帯雨林を駆けていた。
つい先程、アイズとアルカナが3機を追い抜いて目的地へと飛んでいった。
『あ〜あ、飛べる機体っていいッスよね〜。さっさと目的地へ行けて』
ボイスのパイロット、ドマンがぼやく。
彼の機体はジンを改良したものなので、ジンの装備を扱うことができる。それが《ボイス》の強みだ。今回、彼のMSが装備しているのは遠距離からでも輸送船に大ダメージを与えるためのバズーカ砲だ。
『文句言ったってしょうがないじゃない。ドリーちゃんがグゥル買ってきてくれるのを待つしか…って、うおぉ!?』
デュミナが適当な返事を返そうとした時、彼女のMSにビームライフルの一閃が襲いかかった。
危ないところでそのビームをシールドで受け、機体へのダメージは免れた。
『今のって…ダガーのビームライフルよね…?』
「……そのようですね」
ガウルが静かに、しかし重々しく答えた。既に何機ものストライクダガーが、彼等3機を十重二十重に取り囲んでいる。
アマゾンの熱帯雨林に巧妙に隠れていたようだ。どの機体にもシダやコケが付着していた。
『あら…、なんだってこんなところにダガーが?待ち合わせの時間はまだよ?普段も夜もせっかちな男はモテないんだけどね!』
ジョーク混じりにデュミナが悪態をつく。
『向こうはそんなのお構いなしって感じッス…!』
ドマンが叫びながら尚も襲いかかる敵のビームライフルの攻撃をギリギリで避わし続けている。
『どうする、ガウル!? あたしたちもこのままこいつ等と戦う?』
デュミナもシールドで攻撃を受け流している。彼等は基本的にリーダーであるガウルの指示が無いと戦闘をしようとしない。特にそういう決まりがあるわけでも無いのだが、みんなバラバラで戦うよりもガウルの指示通りに戦った方が効率良く、リスクも少なく戦えることをわかっているからだ。ガウルの指示無しに戦うのは今まで空中で単独で戦っていたピケルとそんな暗黙のルールなどまだ知らないソウだけである。
「…ここは彼等のお望み通り、私達で相手をしましょう。というより、それしか手がありません。
前衛は私とデュミナさん、ドマン君はライフルで援護をお願いします」
『了解!』
2人の戦士は声を合わせて叫ぶ。それと同時にボイスとウォーリァーが動いた。
デュミナは今しがた自分にビームライフルの銃口を向けようとしたダガーの両肩を最大出力の《ギルティア》で打ち貫く。狙われたダガーは腕を全く使えなくなり、反撃ができなくなった。距離を置こうと、バックステップで逃げようとするダガーのコクピット目掛け、今度はエクステンショナル・アレスターを放った。ダガーのコクピットがグシャリと潰れ、爆発。それを見届けると、ウォーリァーはまた別の敵へ飛びかかった。
ガウルのMS、シャッフルを相手にしていたストライクダガーのパイロットは我が目を疑っていた。
目の前のシグーの識別が出鱈目に変わることに。
最初はシグーとして認識していた筈なのに、数秒後には「ジン」として認識され、更にその数秒後には、今度は「ザウート」となった。
その間、目の前のシグーは、攻撃もそこそこに、ひたすら回避行動しかせず、ストライクダガーの攻撃は全く当たらないでいた。
その現象は、数秒〜数十秒ごとに起こり、最終的に、そのシグーを相手にしていたストライクダガー達は目の前の敵を、敵と認識できないほどにエラーにエラーを重ね、ブリーズを起こしてしまった。
『何だコイツ!?ロックができない!』
『こっちも駄目だ!クッソ!』
『うわあああぁぁぁ!来るな! 来るな! 来るなあぁぁ!』
必死にMSの認識システムを直そうとする者、カメラアイだけを頼りになんとか攻撃をする者、パニックに陥り、無闇矢鱈にビームライフルを乱射する者、それらをシャッフルは片っ端から重斬刀で切り捨てる。
シャッフルの特殊機能、それがこの「識別信号の変化」であった。シャッフルには半径最大200mまでの敵機に自機の認識を誤作動させるシステムがある。この領域に掴まると、シャッフルをうまくロックオンできなくなり、敵は攻撃ができなくなってしまう。
『認識を〔シャッフル〕する』機能故、機体名とそのシステム名がシャッフルとなっていた。
シャッフルが戦闘を開始してから10分、5機のストライクダガーがシャッフルの重斬刀の錆となった。
数機を相手に大立ち回りを演じているウォーリァーを遠距離からのビームライフルで仕留めようとする1機のストライクダガーがいた。
ターゲット捕捉。照準セット。目標、ゲイツのコクピット部。必殺の一撃の引き鉄に指が伸びる。
ダダダダダダ!
「!?」
ストライクダガー今正にゲイツを仕留めんする時、何処かから重突撃機銃の弾丸がその機体を襲った。弾丸を頭部に食らい、コクピットの映像が砂嵐状態となる。パイロットが泡を食っている隙に、重突撃機銃の持ち主、ボイスは続けてストライクダガーへそのまま弾倉が尽きるまで撃ち続ける。その内の何発かがダガーの致命傷となり、爆散、大破した。
ボイスは『HEAVENLY−SANCTUARY』の他のMSと比べ、決して特別強いわけではない。むしろ、ドマンの操縦技術は並なのでストライクダガー1機とまともに渡り合えるかどうかといったところだ。
ところが、ジンという機体は改良や新兵器のテスト等にも使われるため、装備のバリエーションが多彩で、発展の余地がある。故に状況に合わせて能力を変えられるボイスシステムの搭載が可能であり、使える武器も多い。
そしてドマンは技術では『HEAVENLY−SANCTUARY』内でも一番下だが、アマゾンの地形や兵器に関する知識や咄嗟の気転、状況把握能力などには他のレジスタンスのパイロットと一日の長がある。
この機体とパイロットの資質を最大限に活かした戦い方が、野伏や伏兵、遊撃兵である。前線には立たないが、影から援護をしたり、不意をついて戦う。地味だが、その働きは非常に強力だった。
「コード[CROUD]、ハントモードからスナイプモードへ変更。目標設定…」
脚部の間接の動きを円滑にし、歩行速度と引き換えの忍び足ができる〔ハントモード〕から狙撃用の精密な照準が可能な〔スナイプモード〕に切り替える。
ドマンは機体を木々の間に巧妙に隠し、次の獲物を見定め始めた。
ストライクダガーのパイロット達は殆どが新兵だった。有能なパイロット達の殆どは既に他の重要な戦地に移送されたかレジスタンスとの戦闘で命を落としていた。新兵の彼等は、前もってMS部隊の隊長であるギドーからある程度の敵MSの弱点や攻略法を教わっていたが、彼等とレジスタンスのメンバーとでは、機体やパイロットの錬度が違いすぎた。加えて、アマゾンにはレジスタンスの様様なトラップが仕掛けられてあり、何人かはそれに掛かって大破した。
ガウル達が戦闘を開始してから15分ほど経過した頃には、撤退していった何体かのダガー以外は全て撃破されていた。
「ふぅ…」
周囲に敵がいなくなったことを確認して、ガウルは大きなため息をし、集中を解いた。
『それにしても…、何だってこいつらがここにいたんだかね』
言いながらデュミナは額に浮かんだ汗を腕で拭い払う。
「どうやら、こちらの作戦を読んでいたようですね…。ストライクダガーは17機いました。輸送機をどうしても守りたかったようですね」
『それで網を張っていたってわけッスか』
「はい。しかし、地球軍がアイズとアルカナを知らないわけが無いのにここまで深いところまで攻めてきたというのがどうにも腑に落ちません」
これがサンタレン基地の全部隊だったのなら、今の輸送機を防衛するものは何も無い。アイズとアルカナがいる以上、これでは無謀というものだ。
『ガウルさん、地球軍は大体20機はダガーがあるって予測してたッスよね。今いたのが17機だから、単純に考えれば3機のダガーで輸送船を守ろうとしてるんじゃないスか?』
「ダガー3機でですか?少し非常識だと思いますが…―」
そこまで言った所でガウルは思い出した。
先日、偵察班からの連絡にあった、サンタレン基地に一台の車がやってきたという情報を。
その時は大して気にも留めなかったが、或は…。
「ドマン君、乗用車一台程度で運べる荷物で、戦局をひっくり返せるようなものがあると思いますか?」
『……特殊な兵器…ってことッスか? ちょっと思い浮かばないッスけど…』
「では、乗用車が本来運ぶものは?」
『乗用車ならそりゃ人…あ!』
『え…?何?何なの?』
ただ1人、二人の話にイマイチ付いて来れないデュミナが痺れを切らした。
『パイロットッスよ!ダガーであの2人を相手にできる実力をもったエースパイロットッス!』
「そうです。戦局をひっくり返す兵器を運ぶよりもパイロットだけを持ってくる方がこちらに気付かれにくい」
『そして後からやってくる特機なり新兵器を積んだ輸送機をそのエースで守りとおせれば…ってことッス。例え17機のダガーを犠牲にしても』
『そうか。それであたし等だけ足止めできれば…ってことね』
デュミナも何がどうなっているのかようやくわかってきた。
「アルナさん、今のアイズとアルカナはどうなっていますか?」
ガウルがアルナへ繋がる回線を使い、2人の状況を聞き出す。
『アルカナは3機のストライクダガーと、アイズはスカイグラスパー1機とそれぞれ交戦中、とても輸送機に攻撃できない状態です』
「そうですか。私達もすぐそちらへ向かいますが、あと5分はかかると思います。それまで持ちこたえるよう伝えてください」
そう言ってガウルは回線を切った。
「…急ぎましょう。あの2人が心配です」
どうか無事でいてくれ…。ガウルは切に願った。
実際、ギドーとリジョンはエースとして恥じない働きをしていた。
アルカナは確かに加速や最高速度は異常に速いのだが、その能力はDISCシステムを発動していないととても制御できたものではないので、まだDISCシステムを起動していないソウはアルカナの武器を生かせないでいた。そこをガイコツカラーのダガーが執拗につけこんでくる。
ただでさえ薄いアルカナの装甲は、高速で動いている途中にイーゲルシュテルンに当たっただけでも大ダメージとなってしまう。それを避けること自体は大した苦では無いのだが、ダガー3機相手にそれをやられると避けるだけで精一杯になってしまうのだ。一度、イーゲルシュテルンの弾がアルカナの肩に当たった時には、ショルダー部分がコナゴナに砕け散った。腕そのものにダメージが無かったのは幸いだった。
(…遅い)
ソウはミラーフォースで防御している他にどうしようもない現状に焦っていた。ピケルも相変わらずスカイグラスパーと交戦中で、どうにもならなさそうだ。このままでは輸送機に逃げられてしまう。
ソウはアルナへ回線を繋げた。
「アルナ。今ガウル達はどうしている?何か聞いているか?」
ソウの声がいつにも増して冷静で冷ややかな声になっている。彼が相当にいらついているのだと幼馴染みのアルナは勘づいた。
『さっき、何機ものダガーに囲まれて足止めをされていたの。みんな無事みたいだけど、そのせいでそっちへ行くのにあともう5分はかかるって』
アルナは先ほどガウルから聞いた話とジャングル内にあらかじめ仕掛けられていたカメラやマイクからの情報からそのことを知っていた。
レジスタンスのMSやジャングルに仕掛けられたマイクやカメラから得た情報は、基地へ一括して送られ、それを基地のCICが処理をする。アルナは努力の結果、前日の内にその作業をどうにか実戦で出来るまでになっていた。
「5分…」
危険な時間だ。輸送機は作戦エリアからもう抜け出そうとしている。エリアを抜けてしまうと、そこからは地球軍の防衛範囲内なのでレジスタンスの監視カメラもほとんど無く、こちらのトラップなどあるはずもない、とブリーフィングの時にガウルから聞いた。
エリアを抜けられてしまったら、もう追いかけるのは危険過ぎた。
「わかった。それだと間に合うかどうかわからないから、こっちで何とか輸送機を墜としてみる。ガウル達に急いでくれと言っておいてくれ」
それだけ言ってソウは回線を切った。
あれを使おう。
繋げていると頭が痛くなってくるが、そんなこと言っていられない。今やらずにいつやるか。
ソウはコクピットに転がっているコードを手に取り、そのまま右こめかみにあるジョイント部分に挿し込んだ。
脳内に走る鋭い痛み。最初の起動の時はこれほど痛くなったような気がするのだが。
直後、アルカナと自分が一体となるような気分になる。DISCシステム起動、DUELも発動。
展開していたミラーフォースを背中に戻し、右手にバオウ、左手にフェニックスを携える。目標はあのガイコツカラーのダガーだ。
それまで以上の高機動でダガーに接近した。
いきなりのデコッパチMSの豹変に、ギドーは面食らった。
こちらのビームライフルとイーゲルシュテルンの雨を先ほどのビームマントも使わずに機体を大きくバレルロールして軽々と避け、一気にこちらに近づいてくる、いや、そう思っていた時には、すでに自分のMSのビームライフルを切り裂かれていた。
「ぐぁっ!」
呆然とする間もなく、今度は機体が前のめりに吹き飛ぶ。一瞬で後ろに回っていた青いMSが、ギドーの乗るMSの背中に飛び蹴りを食らわせていた。
僚機の2機のダガーが援護しようと敵機にビームを放つが、瞬間最高速度なら戦略大陸弾道ミサイルすら追い越す機動力を出せる敵機にはまるでかすりもしない。双剣の敵機はアクロバティックな動きでビームの雨を軽々と掻い潜る。その間にギドーはその場からとりあえず退避する。
ビームの猛攻を避けながら、敵機は両の剣を眼前で交差させたと思った瞬間、かなり空高くにいた敵機が巨大化したように見えた。いや、単に常識はずれの速度で接近した為にダガーのディスプレイ上で巨大になったように見えただけだった。
一閃。
それだけで2機のダガーのビームライフルは真っ二つになっていた。
射撃用の武器を破壊すれば、あとは輸送機まで飛んで行くのも容易い。
アルカナは遥か向こうへ逃避している3機の輸送機目掛けて飛んでいった。追っ手がいないのならそこまで速く飛ぶ必要も無い。
相対距離、残り1000メートル、700メートル、300メートル…
もうすぐ輸送機にたどり着く、そう思った矢先、ソウは見た。
輸送機の主翼部分に1機のダガーが立っているのを。
そのダガーは先刻の気味の悪いガイコツカラーのダガーだった。シールドはすでに無く、右手にはビームサーベルが握られていた。
(まさか!? あの間際にここまで昇っていたのか!? この状況を観越して!?)
冷静なソウでさえ、相手のその先読みの良さに一種の戦慄が走った。
驚きのあまり、思わず動きを止めたアルカナに、ガイコツカラーのダガーが襲いかかる。
ダガーは主翼から勢い良く飛び出すと、スラスターの出力を限界まで上げ、アルカナ向かって渾身捨て身でビームサーベルで突撃してきた。ビームサーベルに自機の全体重と全推力を乗せた一撃必殺の攻撃だ。
驚きで動けなかったソウも我を取り戻した。冷静にその場を対処しようとする。
この攻撃、避けられなくも無いが、その攻撃法にソウはデジャヴを起こしていた。
全体重を乗せた一撃。アルナを助けるため、フィルモスに吹っ掛けられた決闘での経験。
ダガーのビームサーベルの切っ先がアルカナの頭部を襲う。
切っ先をわずかな体の移動で避ける。その腕をアルカナは両手で掴み、体を真上へ持って行く。ダガーの腕を掴んで倒立したような体勢になる。そこからダガーの頭部へ強烈なニードロップを決めた。
耳を劈くような轟音がギドーを襲う。機体が揺れ、コクピット内で無情なまでに体を揺すぶられる。
その苦痛の中でギドーはある確信を持ち、憎悪の念が燃え盛った。
地面へ叩き付けられそうなダガーを、スラスター操作で上手く足から着地させる。その後、外部スピーカーのボリュームをMAXにし、空中のMSに向かってありったけの声で叫んだ。
「テメェェ! ソウ! ソウ・クレストか!」
遥か空高くでその声を聞いたデコッパチMSのパイロットは数秒の沈黙の後、返事を返した。
『…ああ』
冷静だが声にどこか驚きの感情が見える。
「やっぱりテメェか!何度も同じ技使いやがって!」
『…やはりお前はあの時の地球軍の兵だったのか』
「そうだ!俺はギドー!ギドー・エスコルドだ!」
実のところ、ソウはギドーという名前すらすっかり忘れていたのだが、それを言うとなんだか確実に不味いことになるんだろうな…と密かに考えていた。
『……』
とりあえず、無言のままでいる。
「なんでテメェみたいなガキがそんなモンに乗ってんだか知らねぇがな!、テメェは絶対俺がぶっ殺してやる!あんまり軍をナメたマネしてんじゃねぇぞ!」
『やれるものならやってみろ。返り討ちにしてやる』
アルカナが空中で2本の大剣を構える。ソウとていきなりナイフを向けて襲いかかるような奴を良く思っているはずが無い。むこうがやる気ならこちらだって容赦しない。
「はっ!ぶっ殺す!」
ギドーが上空へジャンプしようとしたその時、アルカナとダガーの間を一発のバズーカ弾が通りすぎた。
バズーカはダガーを狙って打たれたものではなかったようで、ギドーが避けるのは容易かったが、コクピットのギドーは弾道を悟った瞬間、血相を変えた。回線を開く。
「逃げろ!バズーカ弾が飛んでくる!」
弾道の終着地点は輸送機へと届いていた。