AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する

第10話 オリオンのベルトを
破壊せよ《PART1》

6月29日、05:30分

 地球軍の輸送船襲撃作戦の日の朝となった。

 普段雑談室として使われていた部屋は今ではブリーフィングルームとして機能している。

 そのブリーフィングルームには既にソウ、ドマン、ピケル、デュミナの4人がMSに搭乗する際に着るあの赤い防弾チョッキのようなジャケットを身に付け、
ソファーに座ってガウルの作戦の説明を聞いていた。


 ガウルの説明をかいつまんで解説すると以下のようなことだった。 


 これから30分後の06:00時に今のブリーフィングで決められた配置に付き、待機する。

 情報の限りでは、輸送機は遅くとも07:00時までには作戦エリア内を通る筈なのでそこを攻撃する。

 攻撃には、空中を飛べ、銃を使えるアイズが輸送機を攻撃、その間、地球軍はMSを展開してくる可能性があるので、ボイス、シャッフル、ウォーリァーの3
機がそれらを迎撃する。

 アルカナは、作戦に支障が出ない限りはアイズと一緒に
行動、何か問題が出た時に真っ先に行動する。

......といった感じだった。どうも、アルカナの重要度が低い気がする、というのがソウの印象だった。

 もっともソウだって別に戦いたいわけではないのでそれはそれで構わないのだが。

 つまり、今回はMSだけで行う作戦であり、アルナを巻き込むことは無いということだ。

 アルナが出ないのはソウをほっとさせた。今のアルナは戦う気満万だが、本来は血を見ただけでキャアと叫んだり、怖くなるとすぐ肩を震わせて怯える臆病な
子なのだ。

 先日は彼女も自分を守ると言ってくれていたが、戦場できつい思いをするのは自分だけでいい、と思っていた。

「...と、ここまでで誰か質問はありますか?」

 一通り作戦内容の説明をしたところで、ガウルが聞いてきた。

「今のサンタレン基地の戦力はどれくらいなの?」

 挙手をし、デュミナが質問する。

「偵察と監視の限りでは、サンタレン基地にはMSの補充はまだ無いようなので、基地の規模とこれまでに私達が倒したMSの数を考えると、MSは20機はあ
ると見ていいでしょう」

 ソウはイリュージョン社から脱走する際、追っ手のMS合計27機を相手に勝ったことを思い出した。

 それを踏まえると、今回の3人の作戦は割と簡単なような気がする。

 何せ、今回は相手は20機かそれ以下で、こっちは特殊な装備を持ったMSが3機もいるのだ。

 普通に考えれば、もちろんそんなことは無く、数が圧倒的に多い地球軍のほうが理屈では有利なのはわかっているのだが、以前のレジスタンスグループの戦い
を見ているとそんなものはあまり関係無いのでは…?と思える。

 ガウルの解答を聞いたデュミナは、気の無い相槌を打って終わりだった。

「他に質問は...無さそうですね。それでは各自、MSに乗ってください。出撃します」



 パイロット達は格納庫へ行き、各々のMSに乗りこんだ。ソウももちろん、自分の機体、アルカナに乗り込む。

 アルカナのOSを起動、OSの名前が表示される。その文の頭文字を繋げた言葉、《G,U,N,D,A,M》という言葉が、ソウは少し気に入っていた。ガンダム
、中々悪くない響きだ。 

 不意に、アルカナに回線が繋がった。

『ソウ?』

 アルナの声だ。コクピットの右上のディスプレイにアルナが写っている。

「アルナ?何これ、どうしたの?」

『ええとね、今回は私は戦いには出ないから、代わりにオペレーターをやらせてもらったの。よろしくね』

「そうだったんだ...」

 昨日、これまでの疲労で一日の殆どを寝て過ごしたソウはアルナがそんなことをしていた事など知らなかった。何せソウはイリュージョン社から脱走して以来
、丸3日間寝ていなかったのだ。

『そうだったの。ソウ、昨日はずっと寝てたから知らなかったのね』

 苦笑混じりに彼女は言った。

 アルナはこのレジスタンスに入って以来、ずっと悩んでいたことがあった。

 ソウはこのレジスタンスに入って自分の立場を持つことができたが、アルナは特にこれといってできる仕事も無く、自分がレジスタンスにいる意義を見つけた
かった。

 地球軍に復讐したいというのも彼女がレジスタンスで戦う事を申し出た理由の一つだが、それよりも自分も役に立ちたいという感情の方が上だった。

『お互いこれが初仕事だし、頑張ろうね!』

 アルナが画面内で明るく元気付けるかのように笑っている顔が見える。

「ああ、わかった。アルナも頑張って」

「うん!あ、...ええと、そ、そそれとね?」

 アルナが急に顔をうつむかせ、何か言おうとしている。前髪のせいで表情がよ
くわからないが、どうも火照っている感じがする。

「ん?」

「あの...その...ちゃ、ちゃんと帰ってきて...ね?」

 恥ずかしさで何度か噛みながらも、なんとか言いたいことは言えた。アルナにとって、これが精一杯の送り文句だった。
 
 なぜアルナがそれほどまで動揺しているのかソウにはわからなかったが、アルナが自分の無事を案じてくれていることは理解できた。

「......。わかった。ちゃんと帰ってくるよ」

『うん。じゃあまた後でね』

 そう言って、アルナは通信を切った。

 少しして、ドマンとデュミナが回線を繋いできた。

『それじゃあ2人とも、僕達は先に行ってるッスね』

 2人というのはソウとピケルのことである。

「わかった。俺達もすぐに行くよ」

『みんな、行ってらっしゃいです!』

 ボイス、シャッフル、ウォーリァーは格納庫からのMS用出口から歩いて出ていった。

 しんがりにいたウォーリァーが基地を出る間際、アルカナに回線が繋がった。

『そういえばソウ、オペレーションにアルナちゃんが入ったって聞いてた?』

「ああ、今アルナが回線で言ってきた」

『戦闘中にアルナちゃんとおしゃべりなんかして油断しちゃ駄目よ』

「.......そんなことはありえない」

『ふ〜ん?どうだか?』

「いいから早く行ってこいよ」

 ソウのイライラが募る。それをデュミナも察知した。

『あっそう。まぁ、頑張りなさいな。じゃ、お先に行くから。早く追付きなさい』

 やがてデュミナも発進した。



『それじゃあソウさん、私達も行きましょうね』

 相変わらずの無邪気そうな景気の良い声でピケルが言った。 

 『HEAVENLY−SANCTUARY』にはグゥルのようなMS輸送用のユニットが無いので、飛べないボイス、シャッフル、ウォーリァーは徒歩で目的
地へ行くことになる。

 唯一(今はアルカナもいるが)、空を飛べるアイズの為にこの基地にもカタパルトがあった。格納庫をMSで少し移動したところにあるそれは、ザフトのボスゴ
ロフ級潜水母艦のそれを流用しているため、縦に長かく、垂直発進のカタパルトだ。

 今、アイズとアルカナはそのカタパルトでの発進シークエンスを開始するところだ。

「よし、こっちも準備は万全だ。いつでもいい」

 ソウがピケルに返事を返した。それを聞いていたアルナがオペレーションを始
める。最初はピケルだ。

 天候、風向と風力、周囲の状況、シークエンスの進行状況、その他もろもろをアルナの声が伝える。

『準備OK!アイズ、発進、どうぞ!』

 マイク越しに元気良くアルナが言った。練習していたのだろうか、ソウには初めてにしては手際良くやっているように聞こえた。

『はい!ピケルス・ホワイト、アイズ、出します!』

 ピケルがそう叫ぶと同時にアイズの立っていた地面が強烈に上へ跳ね上がり、アイズを果てなく広がる穹窿へ弾き飛ばした。 

 空まで一気に飛びあがったアイズは、バーニアを駆使し空中で姿勢を整え、作戦地域へ飛んで行った。

『続いてアルカナの発進シークエンスを開始します』

 オペレーションに従い、アルカナも射出の準備をこなしていく。準備が全て済み、アルナが言った。

『アルカナ発進!どうぞ!』

「了解。ソウ・クレスト、アルカナ、発進!」

 蒼く、2本の大型重斬刀を携えた機体がカタパルトの轟音と共に蒼穹の大空へと飛び出した。



 サンタレン基地への補給物資を大量に積んだ地球軍の輸送機は、レジスタンスに警戒しながら予定コースを飛んでいた。周囲に敵機の反応は無い。目下にはア
マゾンの熱帯林が広がっている。

 旧時代の環境破壊の名残が見え隠れするが、いつの日かこの辺りも元あった熱
帯林に戻るだろう。

 輸送機は3機だ。三角形のような配置で飛んでいる。

 先頭の1機には弾薬や食料、雑貨品や兵士の家族からの手紙等の補給関連の物
資が積まれていた。

 その輸送機のパイロットからみて三角形の右角の1機には機内に積めるだけ積
めたストライクダガーが。

 同じく左角を構成する1機には戦闘機やジープ、歩兵用の対戦車用ロケット砲や簡易地対空ミサイル、最近開発された特殊弾頭をつけた拠点攻撃用ミサイル、
その他やや特殊な兵器が占めていたが、その中に2機のMSが積まれてあった。

 片方はストライクダガーに似ているが細部が微妙に違う。

 もう1機はPS装甲なのだろう、機体は地味な灰色だったが、背中に携えた大きな円盤が印象に残るシルエットだ。

 つまるところ、この輸送機団はこの特殊な2機のMSの護送が最重要任務だっ
た。

 先頭を飛んでいた輸送機のレーダー員はそれでも警戒を怠らなかった。

 そして――良くも悪くも――その努力が報われることとなった。

「レーダーに敵機の反応を確認! 数、2! ポイント、ブラボー!」

 輸送機団は機体に配置されている機関砲をその敵機2機へ向け、雨あられと撃ちまくる。

 別に当たらなくともいい。ただ敵を近づけさせなければいいのだ。これはあくまでただの弾幕なのだ。

 だが、MSと輸送機では後者の方が少々分が悪かった。

 2機のMSは弾幕を掻い潜りながら3機の輸送機の後ろにつこうと旋回する。

 それをなんとか防ごうと必死で弾幕をはり続ける輸送機、だが、可愛く塗装したディンが突如急降下し、機関砲を制御するカメラアイのロックがすぐには追い掛
けられない程に高度を下げると今度は一気に上昇、その時には輸送機団の脇腹あたりにいた可愛いディンが輸送機団の後ろについた。

 アイズが体勢を素早く立て直し、右手に持っていたレールガンを輸送機団の右後ろの機体のエンジンに狙いを定める。

 レールガンの引鉄を引こうとしたその瞬間――、一筋のエメラルドグリーンに輝くビームがアイズを襲った。

「わっ...!」

 アイズは寸でのところでそのビームに気付き、機体を後ろへ仰け反らせて回避した。

 ビームの主は熱帯特有の葉の広い木々に覆われた地面から上半身だけを出した、1機のストライクダガーだった。



「こちらはサンタレン基地第1機動小隊。貴官等が安全区域へと脱出するまでの護衛の任につく」

 たった今ビームライフルを撃ったストライクダガーのパイロット、ギドー・エスコルドが3機の輸送機団へ回線を開いてこう告げた。

『こちら第6輸送連隊の第3小隊旗艦、《アルニアム》。了解した。貴官等の援護に感謝する。』

 先頭にいた輸送機の機長はギドーにそう言うと、予定コースを外し、その場を離れる進路をとった。



 さて…、いよいよあのデコッパチと相間見える時が来たか…。ギドーは不気味に口元を歪めた。

 ギドーの機体は性能は普通のストライクダガーと全く変わらないが、隊長機であることを示すためか、単なる趣味なのか、機体のカラーをかなり激しく変えて
いた。

 いくつもある、大きく、いびつな形をし、すすけた感じの黒い斑点が機体を覆い、その斑点と斑点の間をこれまたくたびれた感じの白色が走っている。その風
体はどこかガイコツを思わせた。

 あの時、テリトリアル大佐から受け取ったディスクをギドーは注意深く観察し、何か弱点はあるか、どこにつけこむかを考えていた。

 ギドーはその異常なまでに好戦的であるが故に狂人だのバーサーカーだのと言われ、挙句の果てにどこぞの会社のお偉いさんに精神障害者扱いまでされたが、
実のところはそこまで常軌を逸脱した性格でも、ましてや日常生活を送れないような深刻な精神障害も煩っていない。

 冷静に作戦を考えることもできれば、今のように部隊の隊長としての責務を果たすこともできる。仮にも彼は中尉なのだ。いち士官なのだ。

 ギドーが戦闘狂になる時は戦地で敵と交戦する時である。その際の戦闘への没頭の仕方があまりに異常かつ残忍だったので(目に移るもので動くものなら何にで
も攻撃してしまい、それを楽しむかのような節があった)狂人だのバーサーカーだのと不名誉なあだ名をつけられてしまったのだった。 

 そして彼は今日またその戦闘狂に豹変するだろう。誰も止められない、まるで獲物を見つけた凶暴な猛獣のように。

「お前達、作戦は忘れて無いだろうな?忘れましただなんてぬかすなよ!?死にたくねェなら死ぬ気で思い出せ!思い出したか!?思い出したな!よし、行くぞ!」

 後ろに控えていた僚機のパイロットに乱暴な鼓舞し、ギドーの搭乗するダガーはビームサーベルを抜くと上空にいるアルカナ目掛けて踊りかかった。



 ガイコツカラーのストライクダガーがこちらに向かってきたのを確認したソウは、右手にバオウ、左手にミラーフォースを展開させて持つと、アルカナをその
ダガーへと向かわせた。

 ダガーは右手に持ったビームサーベルをアルカナへ突き出す。アルカナはダガーの左手の方に回り込み、バオウを薙いだ。が、そのアルカナの一閃はダガーの
シールドによって器用に弾き飛ばされた。

 スラスターが持たず、アルカナの攻撃を受け流したダガーは地面へ降下してい
く。

 が、降下中にダガーはサーベルをライフルに持ち替え、アルカナに何発か発砲した。
 
 そのビームはミラーフォースによって受け止められた。

「強いな…こいつ」

 だが、負ける気は無い。ソウはち小さくため息を一つつくと、コクピットのレバーを握りなおし、気合を入れなおした。



 ピケルも別の部隊と交戦していた。

 いや、部隊というには敵機が少なすぎた。

 ギドーの攻撃を回避した矢先、突如として1機のスカイグラスパーが襲いかか
ってきたのだ。

 スカイグラスパーは遠距離からミサイルを数発発射、その後間髪入れずにビームを乱射してこちらへ突進してきた。

 アイズは両手に携えていたレールガンでミサイルを打ち落とし、ビームは空中を滑るような動作で回避する。

 回避運動からそのままアイズをスカイグラスパーの腹へ潜り込ませようと試みたが、その戦闘機は急上昇でそれを阻止する。

「このスカイグラスパー...、戦闘機なのに隙が無い...!」

 尚もピケルの追撃を交わし続ける敵機にピケルは率直な感想を述べた。

 そのスカイグラスパーのパイロット、リジョン・オルマズドもピケルと同じ思いを相手に対して持っていた。

「あいつ、回避動作に無駄が無い…」

 アイズはなんとかスカイグラスパーの背後に回り、レールガンを撃ちこもうとするのだが、スカイグラスパーはそれミサイルとビーム砲での断続的で怒涛のよ
うな波状攻撃と機敏な回避運動の組み合わせでそれを阻止する。

 隙をみてはスカイグラスパーも攻撃を仕掛けるのだが、その攻撃をアイズは舞い落ちる木の葉のような螺旋状の降下で振りきり、凧が空で弧を描くような動き
でビーム避ける。

 機体に余裕を持たせた高度な運動でリジョンのスカイグラスパーをいなしていた。 

 ピケルがリジョンと尚も交戦中、ソウから通信が入った。

『ピケル!今3機のダガーと交戦している!その内の1機がかなり手ごわくて輸送機に向かえない!そっちで輸送機を攻撃できるか!?』

 ソウは3機のダガーのビームライフル一斉掃射をミラーフォースで受けている


「駄目です!こっちも強い敵と交戦中でとても輸送機に攻撃できません!」 

『そっちも駄目か...!ガウル達は!?まだ来ないのか?』

「MSの徒歩で基地からここまで来るのに少なくてもあと8分は掛かります!それまでなんとか耐えてください!」

『...っ、了解だ。このまま戦闘を続行する』

 そう言ってソウからの通信は途絶えた。直後、アルカナのフェニックスとギドーの駆るダガーのシールドがぶつかり合う音が聞こえた。

 アイズとスカイグラスパーのドッグファイトも更に激しさを増し、そのエリアは白熱した戦いが繰り広げられる事となった。



  
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